トリックオアトリートな日樫くんがあまくなる夜

15/16
前へ
/16ページ
次へ
 彼ははっとしたように手で口を押える。やばい、と思っているのが伝わって私は焦った。 「えっと、なにかの罰ゲーム?」  そういうことにすれば、彼の言葉をなかったことにできるかと思ったのに。 「俺ってそんなあほなやつに思われてるわけ?」  むっとして聞き返され、私はさらに焦った。 「違うけど……でも」 「ああもう! こうなったらはっきり言う」  彼は体ごと私に向き直って真剣に私を見つめてくる。 「お前が好きだ。つきあってほしい」 「どうしたのよ。変な物食べた?」  私はごまかすようにおどけて見せる。だが、彼は真剣な顔を崩さない。 「茶化すなよ。突然じゃねえし、ずっと好きだった。俺のこと意識してほしくてお前だけ名前で呼んでた。お前がチョコ持ってるの知ってさ、仲良くなりたくて毎日もらいに行ってた」 「え……?」  私は私で、彼のためにチョコを常備していた。 「今日、人ごみに紛れたら自然に手をつなげるかな、とか、かぼちゃをかぶれば緊張してるのもバレないかな、とかって必死だったんだ」  彼がそんなにいろいろ考えてたなんて、思いもしなかった。 「これだけばらしたんだから、お前も正直に言ってくれよ。好きでも嫌いでも。覚悟は決めた!」  顔をきりっとさせて、彼は言う。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加