トリックオアトリートな日樫くんがあまくなる夜

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「今晩、一緒に食事に行きませんか?」  金本さんの言葉に、私はお茶を噴きそうになった。  さっき私に仕事を押し付けたのに、聞こえる距離で誘うなんて、そんなことある!? 「悪い、先約あるから」  彼はにこっと笑って去っていった。  彼の断り方はとても軽やかで、私はそれも羨ましい。あんなに軽いと断られてもショックを受けなくて済む気がする。  私も仕事を頼まれたときにやってみようか。  ごめん、先約あるから無理。  そう言って笑って断る……のはやっぱり難しそうだ。  ただ真面目に一生懸命に。  それだけしか取り柄がない。愛想よくするなんて無理。  ああ、ダメだ。ネガティブモードになってしまう。  私は引き出しからチョコレートを取り出して口に放り込み、仕事を続けた。  定時を過ぎたらどんどん人が減っていく。  ハロウィンだから友人や恋人、家族と約束がある人が多いようだった。  金本さんも定時になったらにこにこと帰っていった。日樫くんに断られたからといって、やっぱり仕事しますとはならないようだ。  私は必死に彼女の仕事をした。今日中と言っていたから、時計を見る余裕もなくパソコンに向かう。
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