トリックオアトリートな日樫くんがあまくなる夜

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「せっかくだから仮装しようぜ」  紙袋を掲げ、彼は言う。 「なんで」  目を丸くする私の前で、彼は紙袋から黒い布を取り出した。 「予約の時間までちょっとあるからさ。お前はこの黒いポンチョ着て帽子被って魔女な。これならどっちも被るだけだから更衣室とか行かなくていいし」 「いつの間に予約なんて。ていうかこれ、わざわざ買ってきたの?」 「野暮なこと言うなって」 「あなたはなんの仮装?」 「これ」  紙袋の中のかぼちゃの被り物を見せて言う。 「スーツにかぼちゃの被り物と黒いマントだけ、シュールでよくね?」 「シュールより、仮装をさぼってるように思えるけど?」 「それでもいいよ、楽しんだもの勝ち!」  彼はポンチョを私に押し付けるとマントを羽織った。首の前で紐をくくろうとして四苦八苦する。 「やってあげるよ」 「ありがと」  言って、彼は紐を差し出す。  私はどきどきしながら結んであげた。なんだか距離が近くて落ち着かない。
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