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病室にて
白一色の部屋のベッドの上で女性は横になっていた。細い腕には管が繋がれ、ベッドの傍らでは五十代後半ほどの女性とベッドにいる女性よりも年下の男性が座っていた。五十代女性は憔悴し切っており、時折り涙を流していた。
「深月、ごめんね……。こんなことになるなんて!お母さんが病気を貰えたらよかったのに!」
「母さん、落ち着いてよ。姉ちゃんの前でそんなこと言わないでよ」
男性が五十代女性の肩をさすり、落ち着かせようとする。ベッドの上の女性は唇を噛み締めた。管の繋がった手が小さく震える。息を大きく吸った後、彼女は顔を歪ませた。そしてその口から毒を吐く。
「本当よ。この病気、誰かに移したいわ!」
「深月?」
「私、まだ二十七歳なのよ。結婚や出産や色んなことがあったはずなのに。お母さんなんてあとはもう死ぬだけじゃない!」
女性の言葉に五十代女性が唇を震わせる。男性が「姉ちゃん、何言ってんだよ!」と椅子から立ち上がった。女性は枕を掴み、彼に投げ付ける。
「出て行って!!二度とここに来ないで!!これから先の未来があるあんたたちなんて目障りなのよ!!」
五十代女性が泣きながら部屋を出て行き、男性はベッドの上の女性を睨み付けたまま部屋を出て行く。
その後、二人が姿を見せることはなかった。
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