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「二十四時間しかない深月さんには、最期に願い事を一つだけ叶えてあげられるよ。あっ、でも寿命の延ばすとか、自分の病気を治すとかは無理だからね」
「願い事……」
ぼんやりとした頭で私は考える。私が叶えたいことって何だろう。おいしいものを食べたいという気持ちはないし、元気だった頃に推していたアイドルに会いたいという気持ちもない。
「特にないかな」
私がそうデイジーさんに言うと、彼女は「そうですか」とニコニコと笑っていた。
「お願い事があったら早めに言ってくださいね。亡くなる間際だと、もう深月さんは意識が朦朧としちゃってますから」
「うん。わかったよ」
私が答えると、デイジーさんは何かを呟いた。すると私の目の前の真っ白な天井が一瞬にして星空へと変わる。流星群が降り注ぐ綺麗な空だ。こんな空、見たことがない。
「綺麗……」
「最期の瞬間をただぼんやり過ごすのは辛いです。綺麗な景色をランダムで見せちゃいますね」
デイジーさんはそう言い、次々と色んな景色を見せてくれた。夕焼けに照らされる海、満開に咲いた桜の花、山の中を流れる清流。どれも言葉に表せないほど綺麗。
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