天使との二十四時間

4/8
前へ
/12ページ
次へ
でも、綺麗な景色を見るたびに自分の過去の思い出が蘇ってくる。例えば桜の花の時に思い出したのは、お母さんと弟の太陽(たいよう)とお花見に行った時のことだ。 あれは、お父さんが交通事故で亡くなってしばらくしてからだ。小学二年生だった私と保育園に通っていた弟は、お母さんに連れられてお花見をした。桜の下にレジャーシートを敷いて、おにぎりを三人で食べたっけ。 『お父さんがいなくなって大変だけど、お母さん頑張るからね。だから二人にも応援してほしい』 泣いてしまいそうなのをお母さんは必死に我慢していた。悲しいのをグッと堪えて、私と太陽のために笑ってくれていた。 次に思い出したのは、彼氏だった草太との思い出。夕日が差し込む教室が映し出された時、草太から告白されたこと日のことを思い出した。 草太と出会ったのは高校に入ってすぐだった。同じクラスで、偶然同じ保健委員になって接する機会が増えた。優柔不断なところがあるけど真面目で優しい。そんな草太に少しずつ惹かれていった。 『あの、花岡さん……』 放課後の教室。草太が先生から頼まれた仕事を手伝っていた時のことだった。ホッチキスで紙を留める手を止めて、彼は真っ赤な顔をしながら言った。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加