天使は神様のお使い中

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天使は神様のお使い中

「もうっ、創造神様ってば天使使いが荒いんだから」 大きな白い翼を広げ空を泳ぐように飛ぶ 1人の天使がいた。 空色の瞳に風に靡く真っ直ぐな金髪が美しい。 風の心地よさを感じしばし瞼を閉じる。 スープのような匂いがして視線を下に落とすと 眼下には家が立ち並んでおり 人々が行き交っている。 教会に入る妊婦や、 買い物かごを持ち果物を物色する女性、 昼間から酒を飲み大笑いしている酔っぱらいなど 地上には様々な人間がいる。 その天使、アルテミシアは今日も平和で何よりと 微笑むと創造神にお使いに頼まれた場所へと急いだ。 「創造神様より言伝です。 『聖なる者と悪しき者が結ばれしとき 災いが降りかかるだろう』とのこと」 教会にある虹色のステンドグラスの前に浮かび アルテミシアは予言書を読み上げた。 神のお告げがあると集まった人々は ざわめく。 「何だって!? アルテミシア様っ 悪しき者とはどこのどいつなのですかっ!!」 「そのようなこと、何としても阻止しなければ!!」 「悪しき者が 誰か分かったら皆様どうするつもりなのですか? 糾弾するつもりですか? 市民が集まれば暴動が起きることは 目に見えています。最悪その者が 殺されることも考えられる。 創造神様もそれを考えてあえて言わないのです。 特定するような言動はやめた方がいいわ」 まったく、人間ってどうして こうも短慮なのだろうか。 声を上げた男は小さく唸り引き下がった。 創造神様もお告げをする時ぐらいは 人間界に降りてくればいいのに 最近怠けて天界に引きこもっている。 何もわたしを使いっ走りにすることないではないか。 わたしだって人間界の書物を読みたいというのに 創造神様が一向に書物を返してくれず ストレス発散ができないから 最近イライラしてばかりだ。 アルテミシアは小さくため息をつき 予言書の文章に再び目を通した。 「聖なる者と悪しき者が結ばれしとき 災いが降りかかる……聖なる者って 聖女とかいう人間かしら? よくわからないわね」 アルテミシアはまだこの先起こる出来事を 知る由もなかった。
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