14人が本棚に入れています
本棚に追加
天使と青年の出会い
虹色の花の海が広がる花畑にアルテミシアは
舞い降り、翼をしまった。
創造神からのお使いは大抵教会で
毎回この花畑を通る。
この花々の中で昼寝をするのが
アルテミシアの日課だった。
花の布団に仰向けになりスッキリと
晴れた青空を見上げる。
「いい天気ね」
そうしているうちに眠たくなってきた。
アルテミシアの瞼はすでに閉じそうである。
アルテミシアは眠気に体を委ね、
夢の世界へと誘われた。
「大丈夫か?!」
その大きな声にアルテミシアは「な、何っ」と
勢いよく上半身を起こした。
青かった空は夕暮れ色に染まっている。
そんなに眠ってしまったのか。
アルテミシアを見つめる青い瞳が視界に入る。
あまりにも美しくてその瞳に吸い込まれそうだった。
しかし心配そうな表情に我に返る。
「あ、あなたは誰?」
「私は……ヴァイスだ。
良かった。大丈夫なようだな。
しかし、なぜこんな所に倒れていたんだ?」
ヴァイスと名乗る少年の髪は漆黒。
黒い髪は悪魔以外に存在しないのに珍しい。
そう思いつつもアルテミシアは口を開いた。
「倒れていた?
わたしはお昼寝をしていただけよ。
と言ってももう日が暮れそうだけれど」
「昼寝? こんなところでか?」
「ええ。わたしこの場所が好きなの。
ここで寝転ぶと自分もお花になった気分になるのよ」
ふふふと笑うが彼は表情ひとつ変えず
「そうか」と返した。
「しかし、女性がひとりで外で寝るのは危険だ。
不埒な輩が君のことを襲ったらどうする。」
「わたしなんか誰も襲わないわよ」
ケラケラと笑うがヴァイスは至って真面目な様子だ。
「分かったわ。気をつけるから」
「それでいい」
ヴァイスは深く頷き、何かを手渡した。
黒く輝く石。
何かしらと黒い石を見つめ、それから彼を見る。
「これは君を守ってくれる守り石だ。
大事に持っておくといい」
ヴァイスの言葉にアルテミシアは目を見開く。
「どうして、初対面の人にそこまでしてくれるの?」
ヴァイスはアルテミシアから目を逸らし呟く。
「君が、とても綺麗だから……」
心なしかヴァイスの顔が赤い気がする。
「おーい、ヴァイス!」
「……すまない。もう行かないと。
また会えることを願っているよ」
ヴァイスは初めて小さな笑みを見せた。
彼が去った後言葉の意味を理解した
アルテミシアの頰はほんのりと赤く色づいていた。
最初のコメントを投稿しよう!