創造神からの忠告

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創造神からの忠告

「アルテミシア、あなたは恋をしていますね」 白い空間が広がる部屋で 光り輝く人型のものが厳かに言う。 彼はこの世界の創造主であり、 アルテミシアの主人だった。 創造神には何もかもお見通しということは 旧知の事実。 アルテミシアは軽くため息をついた。 「はい。それが何か問題でも?」 「……もうあの者とは会ってはならない」 急に口調の変わった創造神に アルテミシアは首を傾げた。 創造神様は一体どうしたのだろうか。 また何かのごっこ遊びか。 「創造神様、今度は何の遊びです?」 「遊びなどではないっ!!」 大声を上げた創造神から怒りが伝わってくる。 アルテミシアはその雰囲気に口をつぐんだ。 「あなたはヴァイスの正体を知っていますか?」 優しい口調に戻った創造神が問う。 ヴァイスの正体? 「創造神様、一体何を仰っているのですか? 彼は人間ですよ。」 「……確かに見た目は人間です。 ですがあの者は人間ではありません。」 「え?」 全てを見通す創造神の言葉に間違いはない。 アルテミシアは胸のざわめきを抑えられなかった。 「わたしは以前お告げをしました。 内容を覚えていますか?」 「もちろん、覚えていますわ。 『聖なる者と悪しき者が結ばれしとき 災いが降りかかるだろう』 そう予言されました」 ざわめきはさらに大きく不安を呼ぶ。 そして、アルテミシアはある真実に辿り着いた。 「まさか……」 「気づいたようですね」 聖なる者は神様の使いである天使。 悪しき者は身も心も堕ちた悪魔。 まさか、ヴァイスは悪魔だというの?? 「……そんな。 ヴァイスが悪魔だなんて信じられません……。 だって、ヴァイスはとても優しくって」 「ええ、ヴァイスは優しい。それは わたしも分かっています。 優しい悪魔などいないと思っていましたが 彼には心がある。 しかし、それだけでは どうにもできないこともあるのです」 悔しそうな口調に創造神がアルテミシアのことを 充分慮っているのが伝わってきた。 創造神への申し訳なさとなぜ?という 思いが胸に渦巻き苦しい。 アルテミシアは涙が溜まった瞳を 創造神に向けた。 「……でも……わたしはヴァイスと 一緒にいたいのです。どうにか……どうにか ならないのですか?」 創造神が首を横に振る。 「世界の理は守らねばならないのです」 世界から拒絶されたような絶望に アルテミシアはただただ涙を流していた。
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