BLを司るっ

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「モテギさん、何なのですかこれは」  カウンターに並べられた五冊の本。  そのうちの一冊を、石井先生は取り上げた。 「「百年の孤独」」 「は、はい」 「……「を、代わりに読む」、と」 「はい……」 「ふーーーん」  先生はぱらぱらと適当にページをめくった後、ぽん、と素っ気なくカウンターの上に本を置いた。まるでその本に関する一連の行為が、くだらないことであるかのように。 「モテギさん、何やってるんですか。僕はあなたに期待しているんですよ? 貸出数において校内一位を誇るモテギさんこそ、文学を司る若者になれるのではないかと。それなのに小説を誰かに代わりに読んでもらうなど……「百年の孤独」ぐらい、自分の頭で読みなさい。およそ文学は、文学に限らず芸術というものは、個々人の心の鏡に映し出されたものがすべてなのですよ」 「いや、あの、いや、あの」  返答に困った私は結局、 「……すみません」  と、なぜか謝ってしまった。 「分かれば、よろしい」  先生は言いたいことを言い切って、満足げにうなずいた。 「そんなモテギさんのために、先生が「百年の孤独」本体のほうも手配しておきましたので」  ピッ。
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