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リアリティを求めたシナリオライターである本山陽介が、そのリアリティのために同居人を殺害した動機は伝えられました。しかし、最後に自ら命を絶とうとした動機は、裁判でも語ることを許されませんでした。
裁判が行われた時点で、私は既に大量の投薬によって自己の意識を深く沈められ、弁護士の言葉を聞くだけの人形になっていましたから。
私はただ、最期に「フィクションにリアリティを求めるな」と言いたかっただけでした。人が人を殺す物語に、真実味は不必要なのです。人が人を殺す物語にリアルを求めるのは、ある意味狂人めいています。
ですから、私は、私がこの世の中で、最も醜く命を閉じる様を見せたかった。現実の死を見せつけたかった。実際に自分勝手な殺人を犯した人間の末路を世界に示したかった。
「これが殺人者の末路だ」
今も生きている私がこの最期のセリフを書き留めたところで、リアリティはありません。
私は今、誰かの手によって殺されたいと願っています。しかし、その価値もないことも分かっています。
死にたがっている私を殺してくれるほど、私を愛してくれている人などいないのですから。
了
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