第6話 アーカイブ「THE TRUE END」

3/3
前へ
/82ページ
次へ
 リアリティを求めたシナリオライターである本山陽介が、そのリアリティのために同居人を殺害した動機は伝えられました。しかし、最後に自ら命を絶とうとした動機は、裁判でも語ることを許されませんでした。  裁判が行われた時点で、私は既に大量の投薬によって自己の意識を深く沈められ、弁護士の言葉を聞くだけの人形になっていましたから。  私はただ、最期に「フィクションにリアリティを求めるな」と言いたかっただけでした。人が人を殺す物語に、真実味は不必要なのです。人が人を殺す物語にリアルを求めるのは、ある意味狂人めいています。  ですから、私は、私がこの世の中で、最も醜く命を閉じる様を見せたかった。現実の死を見せつけたかった。実際に自分勝手な殺人を犯した人間の末路を世界に示したかった。 「これが殺人者の末路だ」  今も生きている私がこの最期のセリフを書き留めたところで、リアリティはありません。  私は今、誰かの手によって殺されたいと願っています。しかし、その価値もないことも分かっています。  死にたがっている私を殺してくれるほど、私を愛してくれている人などいないのですから。  了
/82ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加