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第1話 インタラクティブ・ミステリー
「ぜひ劇場に足を運んで観て下さい」
テレビ画面の中で、普段バラエティ番組にばかり出ている女優が、久しぶりの主演映画を告知している。ルームシェアをしている男女五人の大学生が、鍋を囲んでその様子を眺めていた。
その五人全員が、アメリカのホームコメディのような生活になるのだろうと、一種の憧れを持っていた。だが、既にルームシェアを始めて二年。ここには、そんな笑いやラブロマンスは存在していなかった。
「映画イコール劇場って時代じゃないよな。大きなスクリーンと迫力満点のサウンドって言われてもさ」
何に対してでも否定から入らないと気がすまない。そういう男である最年長二十二歳の真壁真一が、尻の後ろの床に付けた両腕に体重を乗せて言った。
屁理屈を含む理屈から入るのは、理系の学生の特徴ではある。更に彼の場合、二浪した上に、第一志望からランクを落とした大学に入り、年下に囲まれて捻くれた性格に磨きをかけたようだ。
彼のこの部屋でのあだ名はシンシン。
パンダの名前のような愛らしいあだ名だが、一重で切れ長の目は、横に細長いフチなし眼鏡の奥にあって、獲物を狙う肉食獣のようだ。
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