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プロローグ 進路
中学の頃の友達が会いに来てくれた。
それだけが嬉しかった。
「……ふっふふ」
食卓で満散が笑った。
「何、どうしたの?」
「いやね。何気に嬉しそうな顔をしているもんだから、微笑ましくてね。何かあったのかな~?」
「えっ、……うん。もう、母さん。深読み過ぎだよ。私には、私のペースがあるんだよ」
刹那は顔を赤くした。
『もう一度、付き合ってくれないか。これは最後のワガママだ』
そんな告白が頭を巡らせていた。
そして……
「……ふう、刹那。所で、進路はどうするの。もう三年だけど」
「うん……まだ、決めては無いけど。やりたい事は一つあるけど、聞いてくれる」
「えぇ、聞くのが親の務めよ。でっ、何がやりたいの?」
「……それは」
刹那は一瞬の戸惑いを見せ、そして口を開いた。
「……私、学校の先生になりたい」
「……えっ!? 先生……」
満散は少し咳をし、落ち着き払った。
「……お母さん、駄目かな。勿論、勉強はちゃんとするから……栞ちゃんも居るし、なんとかなるよ」
「なんとかって……刹那。今まで真面目に勉強すらして来なかったでしょう。学校の先生はそんなに甘くは無いのよ」
満散は声を大きく出した。
当たり前に試験だってあるのよ。
と言って聞かせた。
「分かっている。これは本気なの。お願いします!」
刹那は頭を下げ、懇願した。
満散は溜息を吐き。
「分かった、もう何も言わない。頑張りなさいよ」
と優しく刹那の髪を撫でた。
そして、高校三年の日常が始まる。
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