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第一章 故意の掛け引き
1
「おはよう」
「おはよう」
新学期、生徒達が挨拶を交わし合う。
走っている生徒。
この光景を刹那と美奈が見ていた。
「凄いね、この活気。なんか青春って奴だね」
と刹那がおどけていた。
「……はぁ、もう。刹那のせいでしょう。昨年、あんなん宣伝したから」
「えっ!? 私」
「そうだよ。って、何してんの?」
と近くに田んぼがあり、其処に隠れる。
「早く、隠れて」
「……はぁ、はいはい」
登校時間までまだあるし。
「……」
深く息を吐いた。
「所で何をしているの?」
「……もう直ぐ、来る筈だよ」
と刹那は身を隠し、様子を窺っていた。
「はぁ……何をやってるんだろう。私は」
ふと一人の女生徒がぼやきながら歩いて来た。
目付きも悪く、とっつき難い人だ。
名を新月未由だった。
「……何をぶつぶつと呟いてるの?」
「……はっ!?」
未由は誰かに驚き。
その人を見た。
「……そんな、怖い顔をしないでよ。ミッチー!」
怯えながら言っていた。
赤い髪が風で揺れ、憂いた頬は赤くなり、今にも泣き出しそうだった。
「ミッチー、言うな。恥ずかしいだろう!」
未由は怒りながら言うのだった。
暁・由美、二人は生徒会の仲間だ。
「そういや、姉。退院したらしいな。おめでとう」
「ありがとう、姉さんは一年休学していたのに、そのまま三年に上がったけど、私は……」
由美は暗い表情をしていた。
「何だ、私達も三年だろう。何が不満何だ?」
「ううん、もっと勉強しなくちゃって事。そうしないと、姉さんに置いて行かれる」
「そう……でも私には関係ない。行くぞ、学校に遅刻する」
と冷たい言い方をし、歩き出した。
「おっ、待ってよー!」
由美もその後を追って行った。
物陰に隠れていた刹那と美奈がそっと出て来た。
「……だってさ! ったく、素直じゃないよね。ミッチーは」
「あのね……刹那。これは、悪趣味だよ。少しは信用しなよ」
美奈は刹那の事が心配だと思っていた。
「まぁ、後一年あるし。頑張って行こうか」
「ほんと、前向きね。はぁ、私はどうしようかな」
美奈は考え込んでいた。
「……さっさと、行って。……ううん」
刹那は手を出した。
「えっ、もう。これだから」
「……」
二人は手を取り、学校へ向かった。
美奈の夢はと聞いた。
しかし、まだらしい。
そんな簡単じゃないよな。
「おはようございます!」
ふと校門で生徒を代表する一人の女生徒が居た。
神無月・栞だ。
「……ありゃりゃ、新学期早々、だね」
「二人共、おはよう!」
栞が気付き声を掛けた。
「おはようございます、会長。今日は盛大に張り切ってますね」
「……当たり前です! 私達はもう上級生です。気を引き締めないと。そうよね、刹那さん」
と刹那に当たり前に凝視した。
「うっ、嫌だな。おはよう、栞ちゃん」
「貴女は相変わらずに生きるつもりなのですか?」
「……それ、おいおいって事で。じゃ、生徒会、頑張って」
とそそくさと去るようにすり抜ける。
すると。
「はいはい、駄目ですよ。刹那ちゃん。何もかも挑戦ですよ」
と車椅子に乗って出て来た一人の女生徒。
赤い髪が風で揺れ、生徒会の腕章を着けていた。
「……副会長、もう。分かってますよ。はぁ、私だって生徒会の一員。なんとかして見せます。はぁ、行くよ美奈」
「……うん」
二人はそのまま学内に入った。
「良いんですか、もう学校に?」
「えぇ……私だって此処の学生よ。来ちゃ駄目なの? 栞」
副会長、暁・和美。
由美の姉であり、豊島の元会長。
一年生の頃、交通事故に遭い、暫く入院していた。意識不明の状態はたったの数週間で目覚めても、妹の由美に意識が戻ってないと嘘を吐き通して来た。
友達が出来、そして本当の事を話す事にした。
「暫く由美、べったりだったよ。はは」
「そうよね、これからは気を付けないとね。刹那や未由さんにも」
「えっ、まだまだよ。栞」
「何が?」
「この先、彼女達は変わるわ。それを見守るのも、栞の使命よ。頑張って」
「……何でよ! って言いたいけれど、分かっているわ。あの娘達は、何かと心配だし」
とふと空を見上げ。
「おやおや、随分と生徒会長らしくなったね。感心感心!」
「違うわよ。はぁ……問題児を教育しているのよ。あんなんじゃ、ロクな大人にならないから」
栞は物淋しそうな表情し、言った。
「もう一年よ、あっと言う間よ」
「そうね、さてと」
和美は車椅子を動かし、行内に戻るように。
「じゃ、その一年、立派にしなくちゃね! 私も協力するから」
「ありがとう」
栞は微笑み、三年の一学期の始まりだ。
教室に入ると。
「おはよう! みんな!」
刹那が教室に入ると挨拶をした。
進級してもクラスは変わらない。
「刹那、おはよう!」
「今日も元気じゃ、ねぇーかよ! 何か良い事でもあったのか?」
クラスの友達が他愛のない話に付き合う。
それも、クラス中の日課である。
「いやいや、もう三年生だよ。みんなはどうなの?」
「俺達か……うん~ちょっとな。寂しくてな」
「寂しい? 何が?」
刹那が首を傾げ、不思議そうに見ていた。
「……ほらっ!?」
「写真?」
其処には、イベントなどをしたクラスの人達が写っている写真だった。
「ほんと、あっという間だよな。入学したと思ったら、もう三年生だ。……はぁ」
三年生になったら、何かやりたかった。とでも思っているが、クラス中は最後の一年を噛み締めていた。
「美奈」
「何……刹那。ってかどうしたのよ」
美奈は刹那の異変に気付き。
「いや、何かやる気だったけど、みんな、思い出に浸っているんだね。どうしようか」
三年の上は無い。
学生で居られるのは今年までだ。
「いや、高校も六年あれば良いのにね。はっはは……」
「そんなのは無いでしょう。ったく、何考えているの」
「……うん」
「相変わらずだな。変な事を考えるなよ! 私は疲れるのはご免だ」
由美と未由が合流し、話に加わった。
「うん、変な事じゃ無いけど」
「もう、三年だってのに、刹那は」
由美は笑いながら言った。
「ヨッシー、私は私だよ。私がこれから何をやるか……」
「……何!?」
未由が驚き、怖い顔をした。
「ミッチー、待って待って! 何で近寄るの? 一体何をする気」
「さてね。まぁ、今日は大人しくしてくれよ。これから、始業式だぞ」
未由は自分の席に座った。
「……ほんと相変わらずだね。もう、連れないんだから」
「まぁ、この一年、自分を見付ける為、一人暮らしを決意し、この地に残ったからね。父親は良く許してくれたね」
未由の父は徳島から東京へと仕事に行く事に決まり、そのまま向かった。
もう一度、此処で頑張ると。
「……まぁ、今年は何か待っているのかな」
「刹那……あんまり無茶しないでね。じゃないと」
美奈は軽く刹那の肩に手を置いた。
「美奈……」
「おい、何をやってる。もうチャイムが鳴ったぞ。さっさと席に着け!」
ふと先生が入って来た。
「ほら、山崎先生が来たよ。話はまた後で」
「うん」
三年の始めのホームルームが始まった。
「今日から三年だ。どう言う事か分かるな。後一年だ。この先の未来、自分で決める。そう言う一年になる。しっかりと決めるように。特に刹那!」
「うぇっ!?」
名出しをされ、皆の視線が集まった。
皆が皆、同じ事を思っていた。
「酷いな、みんな。私が何も考えてないと。そう言いたいの?」
「そう言うんじゃ無いが、ちゃんと考えて置くようにな。ホームルームは終わりだ。何か質問は?」
と山崎の問いに、皆は手を挙げなかった。
三年生になると、色々イベントがある。
「じゃ、これで。明日からは通常授業だ。忘れ物はするなよ」
山崎はそう言って、出席簿を持ち教室を出た。
「……カラーかな?」
「何がよ」
「はぁ、まだ無色だよ。……高校最後なのに、気が早いと思わない。切な過ぎない」
と叫ぶが、美奈が苦笑いをした。
「当たり前だ。まさか、高校生活が後二年続けばと思っているのか?」
未由が呆れて言った。
「……違うよ」
「何がだ、言ってみろよ」
未由はいつになく怒っている表情を見せていた。
「ミッチー、怖いよ」
「……くっ、まぁ依然の私なら此処には居なかった。だから、最後まで面倒見て貰う。だが、変な事はするな。……」
と正しい事を言う未由。
「うん、分かったよ。なんか、気が強くなったね。はぁ」
刹那は思い返していた。
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