第一章 故意の掛け引き

1/1
前へ
/2ページ
次へ

第一章 故意の掛け引き

                1 「おはよう」 「おはよう」  新学期、生徒達が挨拶を交わし合う。  走っている生徒。  この光景を刹那と美奈が見ていた。 「凄いね、この活気。なんか青春って奴だね」  と刹那がおどけていた。 「……はぁ、もう。刹那のせいでしょう。昨年、あんなん宣伝したから」 「えっ!? 私」 「そうだよ。って、何してんの?」  と近くに田んぼがあり、其処に隠れる。 「早く、隠れて」 「……はぁ、はいはい」  登校時間までまだあるし。 「……」  深く息を吐いた。 「所で何をしているの?」 「……もう直ぐ、来る筈だよ」  と刹那は身を隠し、様子を窺っていた。 「はぁ……何をやってるんだろう。私は」  ふと一人の女生徒がぼやきながら歩いて来た。  目付きも悪く、とっつき難い人だ。  名を新月未由だった。 「……何をぶつぶつと呟いてるの?」 「……はっ!?」  未由は誰かに驚き。  その人を見た。 「……そんな、怖い顔をしないでよ。ミッチー!」  怯えながら言っていた。  赤い髪が風で揺れ、憂いた頬は赤くなり、今にも泣き出しそうだった。 「ミッチー、言うな。恥ずかしいだろう!」  未由は怒りながら言うのだった。  暁・由美、二人は生徒会の仲間だ。 「そういや、姉。退院したらしいな。おめでとう」 「ありがとう、姉さんは一年休学していたのに、そのまま三年に上がったけど、私は……」  由美は暗い表情をしていた。 「何だ、私達も三年だろう。何が不満何だ?」 「ううん、もっと勉強しなくちゃって事。そうしないと、姉さんに置いて行かれる」 「そう……でも私には関係ない。行くぞ、学校に遅刻する」  と冷たい言い方をし、歩き出した。 「おっ、待ってよー!」  由美もその後を追って行った。  物陰に隠れていた刹那と美奈がそっと出て来た。 「……だってさ! ったく、素直じゃないよね。ミッチーは」 「あのね……刹那。これは、悪趣味だよ。少しは信用しなよ」  美奈は刹那の事が心配だと思っていた。 「まぁ、後一年あるし。頑張って行こうか」 「ほんと、前向きね。はぁ、私はどうしようかな」  美奈は考え込んでいた。 「……さっさと、行って。……ううん」  刹那は手を出した。 「えっ、もう。これだから」 「……」  二人は手を取り、学校へ向かった。  美奈の夢はと聞いた。  しかし、まだらしい。  そんな簡単じゃないよな。 「おはようございます!」  ふと校門で生徒を代表する一人の女生徒が居た。  神無月・栞だ。 「……ありゃりゃ、新学期早々、だね」 「二人共、おはよう!」  栞が気付き声を掛けた。 「おはようございます、会長。今日は盛大に張り切ってますね」 「……当たり前です! 私達はもう上級生です。気を引き締めないと。そうよね、刹那さん」  と刹那に当たり前に凝視した。 「うっ、嫌だな。おはよう、栞ちゃん」 「貴女は相変わらずに生きるつもりなのですか?」 「……それ、おいおいって事で。じゃ、生徒会、頑張って」  とそそくさと去るようにすり抜ける。  すると。 「はいはい、駄目ですよ。刹那ちゃん。何もかも挑戦ですよ」  と車椅子に乗って出て来た一人の女生徒。  赤い髪が風で揺れ、生徒会の腕章を着けていた。 「……副会長、もう。分かってますよ。はぁ、私だって生徒会の一員。なんとかして見せます。はぁ、行くよ美奈」 「……うん」  二人はそのまま学内に入った。 「良いんですか、もう学校に?」 「えぇ……私だって此処の学生よ。来ちゃ駄目なの? 栞」  副会長、暁・和美。  由美の姉であり、豊島の元会長。  一年生の頃、交通事故に遭い、暫く入院していた。意識不明の状態はたったの数週間で目覚めても、妹の由美に意識が戻ってないと嘘を吐き通して来た。  友達が出来、そして本当の事を話す事にした。 「暫く由美、べったりだったよ。はは」 「そうよね、これからは気を付けないとね。刹那や未由さんにも」 「えっ、まだまだよ。栞」 「何が?」 「この先、彼女達は変わるわ。それを見守るのも、栞の使命よ。頑張って」 「……何でよ! って言いたいけれど、分かっているわ。あの娘達は、何かと心配だし」  とふと空を見上げ。 「おやおや、随分と生徒会長らしくなったね。感心感心!」 「違うわよ。はぁ……問題児を教育しているのよ。あんなんじゃ、ロクな大人にならないから」  栞は物淋しそうな表情し、言った。 「もう一年よ、あっと言う間よ」 「そうね、さてと」  和美は車椅子を動かし、行内に戻るように。 「じゃ、その一年、立派にしなくちゃね! 私も協力するから」 「ありがとう」  栞は微笑み、三年の一学期の始まりだ。  教室に入ると。 「おはよう! みんな!」  刹那が教室に入ると挨拶をした。  進級してもクラスは変わらない。 「刹那、おはよう!」 「今日も元気じゃ、ねぇーかよ! 何か良い事でもあったのか?」  クラスの友達が他愛のない話に付き合う。  それも、クラス中の日課である。 「いやいや、もう三年生だよ。みんなはどうなの?」 「俺達か……うん~ちょっとな。寂しくてな」 「寂しい? 何が?」  刹那が首を傾げ、不思議そうに見ていた。 「……ほらっ!?」 「写真?」  其処には、イベントなどをしたクラスの人達が写っている写真だった。 「ほんと、あっという間だよな。入学したと思ったら、もう三年生だ。……はぁ」  三年生になったら、何かやりたかった。とでも思っているが、クラス中は最後の一年を噛み締めていた。 「美奈」 「何……刹那。ってかどうしたのよ」  美奈は刹那の異変に気付き。 「いや、何かやる気だったけど、みんな、思い出に浸っているんだね。どうしようか」  三年の上は無い。  学生で居られるのは今年までだ。 「いや、高校も六年あれば良いのにね。はっはは……」 「そんなのは無いでしょう。ったく、何考えているの」 「……うん」 「相変わらずだな。変な事を考えるなよ! 私は疲れるのはご免だ」  由美と未由が合流し、話に加わった。 「うん、変な事じゃ無いけど」 「もう、三年だってのに、刹那は」  由美は笑いながら言った。 「ヨッシー、私は私だよ。私がこれから何をやるか……」 「……何!?」  未由が驚き、怖い顔をした。 「ミッチー、待って待って! 何で近寄るの? 一体何をする気」 「さてね。まぁ、今日は大人しくしてくれよ。これから、始業式だぞ」  未由は自分の席に座った。 「……ほんと相変わらずだね。もう、連れないんだから」 「まぁ、この一年、自分を見付ける為、一人暮らしを決意し、この地に残ったからね。父親は良く許してくれたね」  未由の父は徳島から東京へと仕事に行く事に決まり、そのまま向かった。  もう一度、此処で頑張ると。 「……まぁ、今年は何か待っているのかな」 「刹那……あんまり無茶しないでね。じゃないと」  美奈は軽く刹那の肩に手を置いた。 「美奈……」 「おい、何をやってる。もうチャイムが鳴ったぞ。さっさと席に着け!」  ふと先生が入って来た。 「ほら、山崎先生が来たよ。話はまた後で」 「うん」  三年の始めのホームルームが始まった。 「今日から三年だ。どう言う事か分かるな。後一年だ。この先の未来、自分で決める。そう言う一年になる。しっかりと決めるように。特に刹那!」 「うぇっ!?」  名出しをされ、皆の視線が集まった。  皆が皆、同じ事を思っていた。 「酷いな、みんな。私が何も考えてないと。そう言いたいの?」 「そう言うんじゃ無いが、ちゃんと考えて置くようにな。ホームルームは終わりだ。何か質問は?」  と山崎の問いに、皆は手を挙げなかった。  三年生になると、色々イベントがある。 「じゃ、これで。明日からは通常授業だ。忘れ物はするなよ」  山崎はそう言って、出席簿を持ち教室を出た。 「……カラーかな?」 「何がよ」 「はぁ、まだ無色だよ。……高校最後なのに、気が早いと思わない。切な過ぎない」  と叫ぶが、美奈が苦笑いをした。 「当たり前だ。まさか、高校生活が後二年続けばと思っているのか?」  未由が呆れて言った。 「……違うよ」 「何がだ、言ってみろよ」  未由はいつになく怒っている表情を見せていた。 「ミッチー、怖いよ」 「……くっ、まぁ依然の私なら此処には居なかった。だから、最後まで面倒見て貰う。だが、変な事はするな。……」  と正しい事を言う未由。 「うん、分かったよ。なんか、気が強くなったね。はぁ」  刹那は思い返していた。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加