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絵画に魅せられて
福岡出張2日目の朝
取引先の会議室では、昨日に引き続き
緊迫の話し合いが行われていたが
昼食を挟んで商談は無事成立
最終契約書を取り交わす事が出来た。
ようやく終わった...
最終段階、言わば状況は大詰めであったが
意表を突いた提案をしたところ
とんとん拍子で合意に至った。
夕方の予定がぽっかり空いてしまったよ...笑
小澤裕之にとっての、嬉しい誤算だった。
いやはや?...これほどスムーズに
事が運ぶとは思わなかったなぁ。
しっかり事前の準備をして
商談に臨んでいた事が功を奏したのだろう。
一刻も早く、社に報告をしなければ...
裕之は顔をほころばせた。
足早に取引先オフィスを出た裕之は
報告書を片手に本社へと送信を急ぐ。
大手商社「M」東京本社の事業部に籍を置く
小澤裕之は3年余りのドイツ赴任から
3ヶ月前に戻って来たばかりの32歳
エリートコースを歩む
若手期待の星と言われる一人だった。
事業部部長である石黒に連絡を入れると
「小澤、いやーよくやった‼︎
報告書見たぞ。とんとん拍子で驚いたよ。
後は任せろ!明日は土曜日だ。
ゆっくり観光でもして帰って来るといい。
お疲れさん!
じゃあ月曜日に待ってるからな」
労う部長の声が心なしか弾んで聞こえる。
良かった..
上手くいって...
福岡市に地盤を持つ高取物産との商談が
会社にもたらすメリットは計り知れない。
将来的に莫大な利益を生み出す源泉
となり得るだろう。
だからこそ、転勤から戻った途端
課長に大抜擢された自分に
全権を委ねてくれた部長の顔を潰す訳には
いかなかったのだ。
裕之は、ホッと胸を撫で下ろし
心底安堵した。
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