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裕之は、繁華街のある地下鉄天神駅から
アクセス抜群の老舗ホテルNに
宿を取っていた。
出張に同行していた部下は花金だからと
慌ただしく東京に戻っていく。
今まで福岡出張がなかったわけでは無い
時間に余裕がないまま
蜻蛉返りする事も多く、福岡という街を
ゆっくり楽しむ事が出来なかっただけ。
有難い事に契約を終えた今、気分は晴れやか
夕食まで時間はたっぷりある。
良い機会だ！
散歩がてら大濠公園にあるという
美術館を久し振りに覗いてみるか...
裕之は幼い頃から美術好きの母に連れられ
美術館巡りを日課のようにして育った
芸術愛好家の一人だった。
地下鉄で大濠公園に到着した後
美術館を目指してお濠の周りを歩いていると
ジョギングしている人達と行き交う。
いい所だよなぁ...
福岡市美術館に着き常設展示室を目指して
2階に上がると、入って直ぐ中央の
大きな壁にデーンと、聖母マリアがダリの
愛妻ガラに置き換えられた作品
ダリ「ポルト・リカドの聖母」が
飾られていた。
ダリにとってのミューズは夫人のガラで
「神」などは存在せず、創造の源泉である
愛妻ガラだけが自ら信ずるに足るものだと
言いたかったのかも知れない。
いつか僕にもそんな女性が現れるのかなぁ...
この絵に興味を惹かれた。
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