石川華奈side

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石川華奈side

夏休みが終わり美術館でのスケジュールが 一段落した9月ある日の夕方 常設展示室を巡回中の私の目に ダリの絵画前に佇むひとりの男性が 映り込んだ。 10分程回って戻ってくると その男性はまだ絵の前で立ち尽くしている。 この絵の何がそんなに気になるのかしら? ただ漠然と、その理由に興味を持った私は 普段は絶対にしないであろう声掛けを その男性にしてみた。 「この絵のどこに興味を惹かれますか?」 その男性は、こちらを向いて 「ダリのミューズはガラ夫人なんだなぁ  と思いながら見ていました」と答えた。 上背のある私よりも、頭ひとつ身長の高い その人は、綺麗な目をした 爽やかな風貌の男性だった。 ここは職場!私は、感情を抑えながら 「ゆっくりご鑑賞下さい」と言って その場から離れようとした。
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