その本は貸し出し中

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 その言葉に、二人は胸が締め付けられるような思いだった。交通事故に遭う直前まで読んでいた本の中に魂が閉じ込められていたのか、物語の内容に影響されて心の中でかくれんぼをしていたのかはわからない。 「花菜、君を見つけたよ」  大和が優しく言った。 「うん、ちゃんと見つけたんだよ」  飛鳥も微笑んだ。  今野花菜は静かに涙を流しながら、二人に感謝の言葉を伝えた。そして、彼女は再び目を閉じた。その表情は穏やかで、なんとなく微笑んでいるようにも見えた。あと何時間かのち、今野花菜は普通に目覚めるだろう。もう、かくれんぼは終わったのだから。  その後、二人は最後の一冊でもある『かくれんぼ』を今野花菜の母親から預かり、学校の図書室に入っていった。二人は貸し出し簿の前に立ち、担当の教員に本を返却した。 「これで、図書室の本を全部読んだな」  大和がつぶやく。 「そうだね。でも、これは勝ち負けじゃない」  飛鳥が静かに応じる。  そして二人は、貸し出し簿の同じ行に名前を書き込んだ。  中学最後の二人の勝負は一緒に朗読したことで引き分けに終わった。しかし、最後に残った運命の一冊は、結果以上に大切な思い出を二人にもたらした。 了
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