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その小説のタイトルは『かくれんぼ』。タイトルはわかったが、二人はその本を一度も手に取ったことがない。なぜなら、それは二人がこのゲームを始めた三年生になった春にはすでに貸し出し中で、今現在も貸し出し中のままなのだ。
「今野花菜って、誰なんだろうな?」
大和が疑問を口にしたのは、ある放課後、図書室の貸し出し簿をこっそり見たときだった。二人の通う中学は公立で、図書の貸し出し管理は今でも昔と同様に貸し出し簿で行っていた。
「私も知らない。でも、卒業までにはその本をどちらかが読まないと勝負がつかないよね。どうする?」
「ほんとだよな。俺たちの中学最後の勝負が、こんな形で水をさされるとは思わなかったぜ」
「でもさ、なんでこの今野花菜さんは、本を返さなくても注意されないんだろうね」
「まあうちの中学は学校司書さんもいないし、図書委員や先生が代わりばんこに受付しているから、みんな大して責任感なんてもってないのかもな」
「そうかもね。でも、さ」
「ああ、さすがに三年間も貸し出し中はやばいよな」
飛鳥も同じように疑念を抱いていた。貸し出し簿に書かれている貸し出し日は、今から三年も前の日付だったのだ。二人は次第にその本を借りた今野花菜という人物について興味を持ち始めた。最初は単に「かくれんぼ」を手に入れて勝負を決めることが目的だったが、次第にその謎の名前に引き込まれていった。そして、二人は学校の記録を調べたり、教師たちに尋ねたりして、今野花菜という名前について調べを進めるうちに、二人は予想外の事実にたどり着いた。
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