その本は貸し出し中

3/8
前へ
/8ページ
次へ
「今野花菜さんは、やっぱりうちの学校の生徒だったみたい」  飛鳥が学校に保管してあった三年前の学級新聞を持ってきた。そこには、『三年二組の転校生紹介!』として、今野花菜の名前が書かれていたのだ。 「転校生だったのか」 「でもさ、卒業アルバムにも文集にも名前なかったよね。またすぐに転校しちゃったのかな?」 「その可能性もあるけれど、まずは三年前の三年二組だった卒業生やそのときの担任の先生に話を聞いてみようぜ」  公立の中学校であるため、すでに当時のクラスの担任は他の中学校に異動となっていて話を聞くことはかなわなかった。またその当時から勤務にしている教員何人かにも訊いてみたが、今野花菜について記憶している教員はいなかった。 「今野花菜、幻の生徒。ぜったいに美人だな」 「なんで美人って分かるのよ?」 「こんなミステリアスな人は、たいてい色白で細くって、長い黒髪の美人って相場は決まってるだろう」 「まあ確かにそういう傾向はあるかな」 「だろ。色黒でマッチョ、ショートカットで上の下くらいの顔の飛鳥とは正反対だな」 「よく見なさいよ。わたしのどこが色黒でマッチョなのよ。ショートカットはそうだけど」  飛鳥はそう文句を言いながらも、顔立ちが上の下という評価には、一定の嬉しさも感じている様子で古い学級新聞を眺めていた。そして、あることに気がついたように表情を明るくした。 「ね、ねえ。この学級新聞の次の号とかに何かヒントが書いてないかな」  転校生がきたことが記事になるのなら、転校して去ってしまったことも記事になっているのではないか、そう飛鳥は考えたのだ。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加