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「なるほど。あり得るな。次の号を探そうぜ」
二人は当時の学級新聞の保管されているファイルを開いた。
「今野花菜は、転校していない」
「だね。まさかこんなことになっていたなんて」
「でもこれから三年経ってるんだぜ。状況は変わっていると思うんだよな」
「じゃあ、本を返せない理由って」
「ああ、もしかしたら、もう亡くなっているのかもしれない」
二人は暗い表情で、学級新聞の記事に目を落としたままでいた。
『新聞係からのお願い
今野花菜さんのお見舞いに行きませんか。
先日クラスメートの今野花菜さんが、下校途中にトラックに撥ねられ、入院してしまいました。転校してきて三日目のことでしたので、まだしゃべったこともない人もいるかもしれませんが、早く元気になれるように、時間がある方はお見舞いに行ってあげてください。
◯◯病院 ◇◇病棟』
転校してきてわずか三日目の出来事。これから友達を作って、残りの中学校生活を満喫するはずの大切な時間に交通事故に遭ってしまい、入院を余儀なくされた今野花菜に二人は同情した。
「ねえ、大和」
「ああ、飛鳥。俺も同じことを考えていた」
「なによ、わたしの言いたかったこと、わかるの?」
「どれだけ一緒にいると思ってるんだよ」
「じゃあ」
「今から病院に行ってみようぜ」
大和と飛鳥は、街の郊外にある病院に足を運んだ。病院の白い建物は無機質で、どこか冷たい印象を与える。まとわりつくような緊張感を紛らわせたいのか、大和が口を開いた。
「やっぱり、『かくれんぼ』は、ずっと今野花菜が持ってるのかな」
「その可能性が高いよね」
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