その本は貸し出し中

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 本来の目的である、二人の勝負を決める運命の一冊『かくれんぼ』についてのやり取りだったが、二人ともあまり興味を持っていないような口調だった。二人の興味はすでに勝負よりも、今野花菜に移っているように見える。 「今野花菜さんの見舞いに来ました。まだ入院しているのなら、お部屋を教えてもらえますか?」  飛鳥が受付の女性に用向きを伝えるが、個人情報保護の問題もあるため教えられない、と丁寧に回答された。 「教えてくれないか」 「当たり前だよね。最近はどこでも簡単に教えてはくれないもんね」  二人が途方に暮れていると、「あの……」と入り口の方から中年の女性に声をかけられた。 「お二人は、花菜のお知り合い?」  女性は大和と飛鳥の顔を交互に見ながら訊いてきた。 「あっはい。わたしたち、三年前の学級新聞を読んで、今野花菜さんがその後どうなったのか気になって」 「それでわざわざ来てくれたのね。まだ、あの子を気にかけてくれる人がいるなんて。本当にありがとう」  女性は今野花菜の母親で、今でも毎日お見舞いにきているとのことだった。二人は、今野花菜の母親に案内されて長い廊下を進み、やがて一つの病室の前に辿り着いた。母親に続いて二人はそっと部屋の中に入ると、薄いカーテン越しに、ベッドで横たわる女性の姿が見えた。 「花菜、お友達が来てくれたわよ」
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