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目の前に広がるのは、川と底なし沼。しかも、ジャングルの湿った空気が肌にまとわりつき、虫の羽音が耳元でブンブン鳴り響く。
普通に考えたら、こんな場所を自転車で走るなんて無茶だ。
「こんな場所、どうやって走れって言うんだよ…」男は呟きながら、再び本を開いた。
何か別の道が示されているかもしれないと期待していたが、ページには何も変化がない。むしろ、本の文字はぼんやりと消えかけている。
「ダメだ…このジャングルから抜け出さない限り、戻れないみたいだ。」本を閉じると、まるで周りの木々がさらに高く、迫ってくるように感じた。
カレンは後ろを振り返り、にっこりと微笑んで手を振った。「早く来なよ!こっちの道、意外と快適だよ!」
「嘘だろ…?」僕はため息をつき、彼女の方に歩みを進めたが、一歩踏み出すたびに足がズブズブと泥に沈んでいく。
底なし沼の匂いと湿気が一層ひどくなる。どれだけ歩いても、前に進んでいる気がしない。
「何で、この本はいつも自然の中ばかり選ぶんだろうな…?」男は不満を漏らしながら、振り返るたびに本の地図が示す場所が自然ばかりであることを思い出す。
街や人のいる場所には決して導かれない。
「おい、カレン、どうして君は平気なんだよ?」男は叫んだが、カレンは軽く振り返って、悪戯っぽく笑うだけだった。
「この本が導いてくれる場所には、きっと何か意味があるんじゃない?」カレンは軽い口調で言いながら、再び前を向いて自転車を漕ぎ始めた。
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