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1 取扱説明書
バーチャル格闘ゲーム【VSおとぎ話】。
日本の会社が作ったこのゲームは、今や世界中で人気だ。E—SPORTSとして全国高校大会が毎年行われているほど。
参加者が仮想現実内で発現できる力は、幼少期に読んだ本でインパクトのあった場面が由来となる。頭にかぶるゴーグル等が脳に働きかけて固有能力になるのだ。それを武器に、三対三で戦う。
頭部を攻撃されると負けとなり、手足にダメージ判定があると、その部分は一分間動かせない。たかが一分だが、対戦時間三十分のなかではじれったい程ながく感じる。
また戦闘地は、参加者の能力のもとになった本からランダムで選ばれる。
例えば俺の本が選ばれたら、ゲーム内には鬼ヶ島の風景が広がるだろう。
そう──俺の運命をにぎる一冊は『桃太郎』なのだ。
なぜ運命という大げさな言葉を持ちだすのか。
実のところ、俺は小野と姫川という同級生と【VSおとぎ話】全国大会に出場している。その大会で、お供が足止めしたところを、刀でとどめを刺す『桃太郎』が大活躍。あっという間に、うちの男子高校が決勝戦に。
明日、千葉県代表の菫女子高校に勝てば優勝となる。日本一だ。この『桃太郎』で運命が決まるといっても過言じゃない。
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