2 決勝前夜

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 俺は小野と目くばせした。  ひょんな所で戦いのヒントを得たものだ。実は戦闘において姫川は──まるで役に立っていない。『桃太郎』の俺が敵に切り込み、『ケルト妖精譚』の小野の妖精が遠方から攻撃して、敵を倒してきた。  姫川はなんと、登場してからずっと寝つづけている。本の名を教えてくれないが『眠り姫』だったのか! キスをすれば起きて戦力となるとは。 「……あぁ、そう言えば、灰塚さんたちは岡山と小野のどっちが好きなタイプ? 僕は皆のアイドルだから恋愛対象にはなれないんだけど、この二人は恋人いないから狙い目だよ」  眠り姫の話を変えようとしたのか、姫川が唐突に合コンめいた方向に話の舵をきった。 「私は岡山君かな」  次女の舞がそう言うと、突然テーブルを叩く音がした。山盛りポテトをばくばく食べる小野の手が止まる。皆が音のもとを見た。長女の愛だ。 「そんなことより、本題に入りましょう。互いのチームのうち一人の能力を言いあうの」  静まり返ったテーブルをとりなすように、舞が補足説明をする。両手を前に合わせながら。 「ごめんね。うちの女子高って姉に憧れる子が多いから、全身に期待を背負っているの。負けるわけにはいかないって。だから全員とは言わないけど、一人だけ本の名を教えてくれない? こちらも手の内を明かすから」  何かの策略だろうか。  だが、それぞれのチームが一人の能力を打ち明けても同条件だ。相手の有利につながるとは思えない。 「試合前に書名をばらすのはルール違反じゃない?」  姫川が疑問を呈すると、愛が口早に答えた。 「大会のルールブックを読んだけど‶第三者には明らかにしない〟という文章だから、当事者間で合意のうえなら問題ないわ」 「そうなんだ……リーダー、どうする?」  姫川と俺は顔を見合わせる。 「悪いわね、姉さんは不安なだけなの。これで安心するだろうから。勝負に関することじゃなければ可愛い人なんだよ」 「舞、余計な事を言わない!」  愛はうつむきながら、次女のブラウスを引っ張って注意した。その姿は少し微笑ましい。  俺達は空いているテーブルに移動して、話し合う。 「よし。あいつらに誰の情報を教えるかだな」  小野が会話の口火を切った。俺もすかさず先手を打つ。 「桃太郎は主戦力だ。対戦相手に伝えるなんて言語道断だ」 「なんだと、俺の妖精だって活躍しているだろうが。遠隔攻撃の能力は秘密にしたほうがいい。姫川の能力でいいんじゃないか。寝ているだけなんだし」  小野が姫川の顔をみる。すると姫川は人差し指を立て、唇の前につけた。
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