3 決勝戦

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 急ごう、と俺はドアノブに手をかける。部屋から出ようとしたところ、小野が肩を後ろからつかんだ。 「一つだけ決めておかないといけない。姫川を見つけたら、どちらがアイツに口づけをするか」  小野はこぶしを強く握って、突きだしてきた。 「これから戦うっていうのに、殴り合いするつもりか?」 「何を言ってるんだ、公平にじゃんけんだろ」  呆れ顔で小野は手をうえにあげる。俺もそれに合わせてこぶしをあげた。  俺はパーで、小野はグー。よっしゃ、勝った! 「よし、小野。熱いキスを頼んだぞ」 「嘘だろ……。普通じゃんけんは、三回勝負じゃないか?」 「いや。お前にしては珍しく男らしくないな」  奴の舌打ちを、俺は聞き流す。 「妖精にキスさせたとしても、感触はあるんだよなあ」  小野はぶつぶつ不平を漏らす。  次から次へと部屋を確認するが姫川はいない。一階への大理石の階段を降りると、小野が声をかけてきた。 「なあ『シンデレラ』ってどんな能力だと思う? ガラスの靴、シンデレラを助ける魔法使い、意地悪な継母達……。あまり攻撃の要素はない。だからあとの2人の本がキーだよな」 「そうだな。姫川からの情報だと、灰塚家は相当な資産家らしい。だから『ギリシャ神話』などの格式高い本か。ケルベロスが噛んできたり、ミノタウロスが戦斧を振るったら、こちらはあっという間に全滅だ。『長靴をはいた猫』とか可愛らしい本だとありがたいんだが」 「うーん、彼女らに衝撃を与えた運命の一冊は何か? まあ、俺か岡山が姫川を見つけ次第キスをして起こす。あとは総力戦しかないか」 *  城の一階にある礼拝堂の扉前に、俺と小野はしゃがんでいる。このチャペルに姫川がいた。  扉の隙間から小さく縮んだ妖精に入ってもらったら、部屋に姫川を発見したのだ。 「中央奥に講演台があって、その前で姫川は寝ている……最悪だ。三姉妹が全員いるぞ。講演台に立っているのが長女で、両脇を次女と三女で固めている。姫川を人質に待ち構えている形だ。レプラコーン、姫川の近くに寄ってみてくれ」  しばらくすると、小野が顔を手で覆って天をあおいだ。 「岡山、アイツは戦える状態じゃない。布団につつまれて縄で縛られている。すやすや寝ているわ……」 「レプラコーンでこのまま、姉妹に攻撃できないのか?」 「宙を浮いているから、ばれないだろうけど今は数センチの小人だ。頭部を攻撃しても、ダメージ判定にならないだろう」 「分かった。もう、レプラコーンを戻してくれて構わない」
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