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見事な誘導だ。
確かにこっちはシンデレラと他の本の組み合わせを考えて、全員がシンデレラだとは思いもしなかった。三つ子であれば、親が寝かしつけに読む本が一緒ということは十分あり得るというのに。
特化型とは好きな本が同じ者が集まって、作るチームの事だ。
往々にして同じ場面に心動かされていて、能力が被るために強さを発揮できないケースが多い。
だがこのシンデレラ特化型はどうだ。三段攻撃のコンビネーションが見事だった。
「舞、彼らに止めをさして」
愛の命令で、次女の舞が俺達に近づく。「お疲れ様ぁ」と俺と小野に声をかけ、頭部をぽんと叩く。
参った、ゲームオーバーだ。悔しさで頭に血が昇るのを感じる。もう打つ手はないか? かすかに動く首を、姫川の寝る布団のほうに向けた。
舞は愛達のもとに戻っていく。
「美依は姫川君の頭を叩いて」
「こき使うなあ」
美依はぼやきながら、布団を覗く。すまきにされている姫川の頬をなぞった。
「綺麗だな。仮想現実でも消しちゃうのが惜しいくらい」
「早くやっちゃいなさい。それで完全勝利なんだから」
もたもたする美依を愛が押しのけて、姫川を始末しようとした。だがそこには布団が広がり、かたわらに千切れた縄が転がっていた。
さっきまでいた姫川がいない。
「ごめんね。女の子に手をあげるなんて、心底したくないんだけど」
いつの間にか舞の背後にたった姫川が、彼女の頭頂部をかるく打った。えっ、と舞が状況を把握する間もなく、姫川はつづいて美依の頭部も押す。
残された愛は頭を隠すように両手でおおい、周囲を見渡す。どこにも姫川は見当たらない。
「分かった。キスもなしで眼をさましているってことは、あなた『眠り姫』じゃない。三年──」
「そう。僕は『三年寝太郎』なんだ」
腰をかがめながら高速移動した姫川が、長身の愛に飛びつく。彼女の手を優しくどかせて、頭頂部を叩いた。
「日本の昔話じゃ、華麗な僕のイメージが崩れるよね」
俺と小野は目を白黒させながら、その光景をみていた。もう体が消えかかって口を開いても声がでないので、湧きあがる疑問を姫川に訊けない。
「そこまで。勝者は岡山チーム」
菫女子高校の女教師が宣言した。
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