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第一話「不可思議すぎる事件」
地味子、といえばわかるだろうか?
地味で残念な子、の今流行ってる略語。だいたい地味子って漫画とかでヒロインになることが多いし、地味子ってハッピーエンドを迎えやすい展開にある。でも実際そんな訳はない。地味子は入学式もひっそりと真面目なふりをして、教室でもちゃんと真面目に授業を受けているふりをし、卒業もひっそりと誰にも気づかれづいなくなっていく。それが、本来の地味子の意味だ。だとしたら、私はあの日を境目に地味子を卒業してしまったに違いない。
だって_あの不思議な日を境目に私はヒロインに「転成」し、そしてハッピーエンドを迎えなければ終われない人生を知ってしまったのだから。
いつもの音楽室、そこにふとでかい号令がかかる。
「今日はこれで終わりです、ありがとうございました。」
「「「ありがとうございましたっっっっ!!!」」」
私の名前は、華野優樹菜。今年で中学二年生になり、さらにはここ吹奏楽部部長となった身だ。部長、しかし、かと言ってその実態は完全なる地味女。長くボサボサの髪、黄色い甘い甘いはちみつのような黄色の瞳。そこにかけてあるのは黒縁の丸い眼鏡。そして生真面目に育ってしまった性格。ほら、地味子の完全体でしょう?
そんな私でも、一応吹奏楽部部長だ。ある事情があり、中2になったばかりの私が部長を務めることになった。まあ理由は当然、私が真面目子ちゃんだから。残念な子だから。きっとそれだけの愛情なんだろうな、とは思っている。
≪この世に、未練はない。いっそのこと私が朽ち果ててしまえばいい。≫
そう思ったことが今までの人生で何回あっただろうか。
部員のみんながどんどん帰っていく。私は、部長だから残って最後の仕事をしなければならない。
「よし、やるか。」
吹奏楽部の部室である音楽室は明日も明後日もどこかの学年クラスが使う。
だからこそ当たり前過ぎて忘れがちだが、部長は片付けの最後のチェックをしなければならない。
ピアノに敷く布はしっかりかかっているか、譜面台をすべて整理整頓して準備室に片付けているか。譜面は全部部員が持って帰ったか、楽器が傷ついていないか。
一つ一つこなしていくのはとても大変で、ひどければ一時間かかることもある。しかし、私が愛せるのはここだけなのだ。たとえ、ちっぽけな愛情でも。私にとっては天国なのだ。
いつものように考え、いつものように行動し、いつものように片付けを終わらせる。それがずっと続いていくんだと思っていた。
それが今日も続くと思っていた。
だが違った。今日は全然普通じゃなかった、いややばかった。
片付けはいつもよりも早く終わり、十五分程度で終わった。だが_そこからが問題だったのだ。音楽室の廊下につながる扉を開ける…すると
「本当かな、これ」
そこには夕焼け色に染まった廊下ではなく。
アンティーク調の天井高が本当に天に届きそうなほど高い、そしてその部屋自体も高そうな部屋があった。
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