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赤髪たちにももちろんその事件は知れ渡っていた。
赤髪たちや家族は緑さんが狙われないか心配していたが、彼女は全く心配していなかった。彼女は自他ともに認める、楽観的主義者だったのだ。しかし_彼女にも魔の手は忍び寄っていたのだ。
ある夜彼女と赤髪は赤髪の家で話をした。美男美女が澄み切った夜空の下で、満月のスポットライトに当てられている光景はさぞ美しかっただろうなと思える。彼女はそんな空を見ながら、美しく微笑み、赤髪の方を見て言った。
“ねえ健くん、もしこの満月が覆いかぶさってしまっても君は私を照らしてくれる?”
そうすると赤髪はゆったりとした笑顔でこう言った。
“照らせる自覚はない_だけど、お前はそんな光で照らさなくてもきれいだ ”
“そう?かな、健くんは優しいね。”
スポットライトの満月の下、二人の笑顔はきらびやかに輝いていた。
しかし、緑の目には寂しさの感情が曇っていた。
何分かしたあと緑さんは用事があるからと言ってそこを出ていった。
そして、その夜。緑さんは失踪したそうだ。
本当に突然のことで、最初は何があったのかでさえわからなかった。
家族は慌てふためき、泣き叫び。
友人たちは家から出ずに、学校をサボり。
そして_赤髪は、寂しさと後悔で己をのしった。
“そう?かな、健くんは優しいね。”
何回もその言葉を思い出しては、自分がなぜあのとき緑さんを止めていなかったのだろうと自責の念に駆られた。そうやってどんどん心がなくなっていった赤髪に、かの先輩が声をかけたそうだ。
「緑山先輩がさ、俺に声をかけたんだよ。」
“自責の念に駆られてばかりでは、誰も助けることはできません。後悔をむしったでしょうがないんだ_それが、宿命なのだから。そうやって受け入れて、前向きに取り組まないとあの楽観的主義者の彼女に叱られてしまいますよ”
「いつもの口調で、笑顔で皮肉そうに言う先輩の顔は寂しさで埋もれていたのに。マジで無理してんだなって、思って_今でも無理してるけど、我慢してて_俺上げる顔がなくなっちまった。」
赤髪は少し恥ずかしげに笑い、言った。
その後、赤髪は元気を取り戻し、いつもどおりにやっていたそうだった。
でも、本当の悲劇はこれからだと、3年前の彼は知る由もなかった。
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