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第八話「危機」
私_優樹菜は校舎裏にいつまでもボーッとしていた…訳でもなく。
赤髪が去ってしまって一分ぐらいすると、予鈴がなってしまったので教室にそそくさと帰っていったのだった。教室では、いつもの女子が推しについて語る声や男子のおふざけ声が広がっている。あの話を聞いたばかりだからか、なんとなく緑さんがここにいたらどんなふうだっただろうと思ってしまう。
きっと、輪の中に入って笑いながら話の中心になっていただろうな…。
そう思っていると、私は何となくこう思ってしまった。
「都合よく転校生とか来たりしないかな」
一人でポツリと呟く。
なんだかこういうときは新しいことが来なくては。
そう思いながら授業を聞いていた私が、これから起きることを少しだけ予言しているだなんて誰も思わなかった。
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「今日の放課後屋上ね」
高1の先輩にそう声をかけられたとき、レノンは結構びっくりしていた。
自分に。
何となく、顔を赤らめてしまったのだ。自分は赤髪一筋だと決めていたのにもかかわらず、他人を好きになってしまった自分に驚きを感じていた。
だから先輩が貼り付けたかのようなにこにこ顔でカフェテリアを離れていっても、レノンはしばらく何もせずに座り込んでいた。
「屋上って…あの高等部と中等部が一緒になってる場所かなあ?」
誰もいない静けさが浸る場所で少しそんな感じのことを言ってみる。もちろん誰も答えてはくれないのだけれど。予鈴のチャイムが店内に響き渡る。流石にいかなければと思い、レノンはカフェテリアを出ていった。すると赤髪とすれ違ってしまった。
一瞬レノンは驚いた顔をする。
突然店を出ていくものだから、彼になにかあったのだろうかと危惧していたのだ。しかし、いざあってみるとなんとなく声が出ない。勇気を振り絞って、いざ声を出してみる。すると
「あ、あの…!」
「あ、あ、あ、ごめん、予鈴なったからまた後でな…」
赤髪は去ってしまった。
レノンはまたもや、その場に立ち尽くす。
予鈴がなったからしょうがないことだ、それが最優先。だけど_
「私のこと、ホントは大切に思ってない?」
最優先は、私になってほしい。
そんなのただの欲望である。ただそれだけの意味であり、感じてはいけないもの。でも_考えずにはいられない。
レノンは少しうつむきがちに、そしてだるそうに教室に向かった。
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