5人が本棚に入れています
本棚に追加
第二話「華乃優樹菜の半グレ事情」
皆さん、こんにちは。
前回一時死亡した、優樹菜です。あれから魂が一時的に抜けかけたあと、一時間してやっと頭が切り替わった。一時間経ってしまえばもう七時。夏ではないから、あたりは一段と暗くなっていた。ギリギリの下校時刻が七時なので正門を締められて、そのまま閉じ込められることがなく本当に良かった…。
「流石に暗いな…早く電車のらないと。」
私の学校は私立学園。もちろん電車通学する人もいるわけで、私もその中のひとり。電車で二十分ぐらい乗ったあと、十五分くらい自転車で登下校するのが私の日常。交通が少々不便なところに住んでいるもので、毎日部活が終われば一目散に帰っているけど…今日は一時間みっちり公開と失望に飲まれていたからそうもいえない。
「しっかし、夜は気味が悪い。裏通りだし仕方がないか。」
夜が怖いというわけでは無い…この世に桃源郷なんてものは存在しないということを14年間信じ続けてきたのだし。まあ今日あんなことあってからはそうも言えなくなってしまったが。
「おいー、それでよぉまじさいこうだったんだぜあいつ」
「はー、まじかよたまんねえなぁ。さっさとそいつらどかしちゃえよぉ、」
「団長命令ねぇから仕方ねぇんだ、お、いたいた。」
「ひっ」
目の前にヤクザがいる。半グレ野郎が‥いる。
私はおばけは苦手じゃない、普通。でも…現実にいる人間は苦手、いや怖いのだ。特に半グレ野郎。
「おじょーちゃん、一緒に俺等と遊ばねぇか?楽しいぜぇ?」
「きっしょ。やめろ、」
ああ、言っちゃったよ。どうも、私チンピラとかと出会うと口が悪くなるらしい。小学校時代荒れていたクラスがあれば、何故か私が導入されていたことがある。それは私がヤンキーと面と向かうと、私自身がヤンキーになって脅すからだ。これだから半グレ野郎は大嫌いなのだ。
「あぁ?いっていい冗談あるって襲わなかったのかあ、このアマ。」
「は_お前らの方こそ、いっていいこと悪いことあるだろ。この中途半端半グレ馬鹿野郎。」
「アァ?」
あー、やばいこれは…怒りが爆発しそうなのと、中途半端半グレ馬鹿野郎が暴力で解決しそうで怖い。どっちが先にくるのか、それはよくわからない。だが…こういうときはこっちのほうが先に来そうだ。
「いい加減にしろ、このちゅーと半端半グレ馬鹿野郎!何ゴタゴタ言ってんだよ、私をお早期か?私は中学2年生のアマだぞ?警察に今からでも通報してやろうか、それともお前らの個人情報全部バラすかどっちかにしろ。個人情報なんてやすやすと手に入るんだよバーか!」
個人情報はやすやすと手に入りません。はい。とうとう私の怒りは噴火レベルにまで達して、私の勝利。半グレ野郎は「お、おぼ、おぼえ、てろ、よ…こわすぎ…。」という言葉を言い残して嵐のように去っていった。覚えていろだなんて私は覚えることが多すぎて、あなた達のことなんて覚えられるわけがない。比喩だとしても本当に、とんだ迷惑だ。
「さて、今日の夕食何かな?」
そして私は、せかせかと帰路についていった。
__________________________
「へえ?そういう人がいたのですか…というか盗聴器つけてみたんですけど、この人乱暴すぎません?毒舌といえば、あの紫野郎を思い出してしまうんですけど…。」
「それは…たしかに。」
「とりあえず、明日は私でいいですか?赤髪くん。ちょっと気になるところがあるので。」
「あ…はい。了解です、緑山先輩。」
そうして、長身の高校生くらいの男子は足取りよくその部屋の扉を締め、去っていった。
「華乃優樹菜さんですか…少し会うのが楽しみです。」
部屋の中の少年は、誰もが見惚れるような美しい笑みをしてみせた…。
最初のコメントを投稿しよう!