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第三話「華麗なる先輩、現る。」
「ああ…やる気の持ちこたえが無い…。」
こんにちは、優樹菜です。もう流石に自己紹介はいいか。
なんでこんな事になっているか。それは…今日吹奏楽部がないのだ。顧問の先生が体調不良でお休みし、監督する先生がいないということで緊急休講ということ。今日は部活やるつもりで来ていたから、なんだかもうやる気がわかない。勉強もうほぼ休み時間に終わらせたしな…ドンッ
「大丈夫ですか?」
透き通るような声。一瞬女性かと思うほど、美しく高い声は男性のもの_ではなかった。緑色のボブで、スラックスを履いており、正式な制服の着方そのものを履いていた美女だった。こちらがボーッとしていたようで、ぶつかったらしい。
「あ、いえこちらこそすみません。」
「いいえ、大丈夫ですよ、優樹菜さん。」
あれ?なんでこの人私もことしっているんだろう?
「不思議な顔をしていますね、そうだ。暇でしょう、あなた。でしたら、私と一緒に帰りませんか?」
「えー、と、え、あはい。」
周りからものすごく冷たい視線を浴びられた。なんだかものすごく悪寒がするのはなぜだろう?ふと、疑問に思いながら美女さんと私は帰り道を沿っていった。
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「で、私があなたのことを知っていた理由を聞きたいんですよね?まあ_まず、その前に自己紹介をしておきましょうか。きっとそっちのほうが手っ取り早い。」
夕暮れ時の空、私達は街が見渡せる周りより少し標高が高い道路にいた。ここは、御伽学園の生徒がよく通る場所だ。だが、下校時刻ピークは過ぎ、人は全く見当たらなかった。そして_この美女さんのペースに乗っかられているのが今の現状というわけだ。まあ、ずっと美女さんって言っててもなんか悪いし自己紹介してもらおうかな。そう思っておずおずと言葉を発した。
「いいですケド…」
「良かった、私の名前は緑山幸人。高等部1年生です。そして、現役守護者の総まとめ役を担っています。」
にこり、と美しき笑みをして彼女_いや彼は夕暮れ空よりも美しい自己紹介をしてみせた。幸人_まさかの、男子だったとは。もともと生まれつきの高い声と、その髪の毛、さらに女性らしさを感じさせるふるまいと態度が私の勘違いの原因だろう。それよりも__守護者の総まとめ役ってまさか_昨日、私にいたずらを仕掛けたのは_!?
そう思って彼の方を見てみると、にこりとした笑みを全く崩さず「そうですよ」と語りかけていた。つまり、今回もまた、私は罠にハマってしまったというわけである。なんか悔しい。
「今度はあなたの番ですよ?」
「…華乃優樹菜です。中等部二年生の、プリンセス宣言された人です。」
「あぁ、昨日の事覚えてていらしたのですね。とても幸いです。」
いや、そこではないでしょう。と、反論しそうになったとき_
目の前に、昨日あったばかりの半グレ野郎がいた。
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