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「あー!昨日私にちょっかいかけようとした!」
「あぁん?舐めてんのかこいつ、今度はボスがお見えだ。覚悟しておけよ。こっちのボスは…っ!ボス!」
なんだか不穏な空気が漂っている。
と、思えば一瞬でその空気は消え去った。そのかわりに漂い始めた空気は、緊迫感。そろそろ、あっちの半グレ野郎のボスが現れるらしい。流石に昨日やりすぎてしまったか…。自業自得だ。そう思って、胸の鼓動が早くなっていくのを感じながらその時を待った。すると_来た。
「お…お前が俺の顔をぐちゃぐちゃにした奴だな。ちっ、俺達の面子がお前のせいで汚れた。どうしてくれんだよ!」
最初っから挨拶もなしに、私に対抗してくるとはなんということか。
あなた達のことは知らないし、どうしようもないことだ。最も、あのとき私にちょっかいを掛けさえしなければよかったものを。だが_あのとき自分を止められなかったのは私も同じ。ここは_迎え撃つしかないのだろう。
そう思って、覚悟を決めたとき誰かが言葉を発した。
「優樹菜さんは下がっていてください。」
その声の主はもちろん、さっき知り合ったばかりの先輩_緑山幸人。
凛々しく、美しい音色を響かせていた。
「ん?おまえさん、かわいいな。どーだ、俺達と遊ばにゃしねえかあ?」
半グレ野郎どもは、先輩のことを女だと思い込んでいる様子。まあ間違えるのも当然。緑色のくすみのない色の髪の毛で、まとまったボブ。そして、身体自体が男性よりも女性といったほうがいい気がするくらい整っている。もちろん、喉仏はあるし胸はない。だが先輩の気品によって女らしさというものを漂わせているのだ。
「はい?あなたたち、どこかの女だと見間違えているようですが私は男です。勝手に女にしないでください。」
もちろんのごとく、先輩は全否定した。それも少し怒ったような口調で。なにか女と見間違えられることにコンプレックスを抱いていたのだろうか…?それも大切だが、今はそれよりも重要なことがある。半グレ野郎を一体どうやって先輩は倒すつもりなのだろうか?
「はあ!?そんな口答え通じるかよ、だって顔は音な声もちょっと低い音あの声みた_あっ!?おまえ喉仏あるくせに、胸もねえじゃねえか!」
「ようやくわかりましたね。」
「いや、だが女にもそんな事あるよな…。」
「・・・。」
あ、先輩が…。
そう思った瞬間先輩が目の前から消え去った。いや、移動した。チーターのように速く。そこからの光景は信じられない。それくらいに驚き伏せることが、始まってしまった。
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