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「首、何つけてんだ?」  マモルが注目したのは私自身ではなく、私の首に貼り付いていた湿布だったらしい。 「ああ、これね。咬まれたとこがまあまあのケガになってて隠そうと思ったんだけど、ちょうどいい大きさの絆創膏がなくて。だから、代わりに湿布を貼ったの」 「外してみ。たぶんもう治ってる」 「えー、1日やそこらで治りそうな感じじゃなかったよ?」 「いいから」  遠慮もなにもなく、勢いよく湿布をはがされて短くぎゃっと声を上げる。 「うっすら(あと)残ってんな。まあまだ1回だし、こんなもんか」 「なになに、どうなってるの?」 「もう咬み傷はほとんど見えなくなってるってこと。鏡で確認してみな」  促されるままに洗面所へ向かう。マモルの言う通り、今朝は引くぐらいに青黒く変色していた首筋が、少しの赤みを残してきれいに治っていた。 「なんで……だって朝見た時はあんなに」 「ヴァンパイアに咬まれた人間は、その影響を受けてしばらく肉体の変化を止めるんだよ。吸血の回数を重ねればよりヴァンパイアに近い体質になって、ケガしても10秒ありゃ元通りになる」 「え、じゃ、じゃあ老化しなくなるってこと?」 「そう。病気にもならないし、髪も爪も伸びない。暴飲暴食しても、逆にダイエットやら筋トレやらをしても体型は変わらなくなる」  歳も取らないし病気にもならないのは最高だけど、このぷよぷよのお腹と一生付き合っていかなきゃいけないのはつらいかもしれない。そんなことを考えながら、私は自分の腹にまとわりつく余計なお肉をそっと撫でた。 「ヴァンパイアのドナーとして定期的に吸血されてれば、の話だ。ま、お前は行きずりの都合のいい女だし、そのうち飽きたら解放してやるから安心しろ」 「はあー!? 都合がいいとか行きずりとか、アンタほんとにまじで」  サイテーだな、と言いかけた口を手で塞がれ、腰に回された腕で更に距離を縮められる。体を密着させた状態で、マモルはにこりともせず私をじっと見つめた。 「アスカ、お前ちゃんと理解してる? 飽きるまでは絶対に離さねーからそのつもりでいろってことだよ。他のヴァンパイアにフラフラ付いていくようなことがあれば殺すからな」 「……」 「分かったらうなずいて返事しろ」  うなずいてしまえば「他のヴァンパイアに浮気したら殺されても構いません」という契約を結んだことにならないだろうか、なんて懸念が湧いたけれど、拒絶したらこの場で即刻手を下される気がする。  一瞬にして安全ルートをはじき出した私は、何度も細かく首を縦に振って答えた。
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