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 飲み会、もとい、合コンが始まって1時間。京野さんと光山さんは、初めに向かいに座っていた後輩くんたちといい感じになったようで、4人で席を交換して談笑している。尚ちゃんは初めての合コンだと言っていた割にはなかなかのやり手らしく、中道くんのハートを射止めたようで、隣の席に移動してきた彼からかなり熱烈なアプローチを受けている。 「えっ、釣りやるんですか?」 「うん。船釣り一筋だったんだけど、最近は磯釣りにはまっちゃって。いまいろいろと装備を整えてるとこなんだ」 「そうなんですね! よかったら俺、いい店知ってるんで紹介しましょうか」 「菊池くんは、磯釣り好きなの?」 「結構オールマイティにやってるんです。海だけじゃなく、池も川も湖も! 湖でボート出してやる釣りは最高に癒されるんですよね~」 「わあ、なんだかのんびりできて良さそう。淡水魚って釣ったことないんだけど、引きとかどんな感じなのかな」 「海水か淡水かっていうより、住んでる環境の違いで引きは変わると思います。同じ淡水魚でも、川に住んでるニジマスと池に住んでるヘラブナとを比べたら……」  隣から私の向かいへ移動した祐奈と、祐奈の隣に座る菊池くんの会話だ。  釣りという、祐奈のエレガントな見た目からは想像もつかないネイチャーな趣味が菊池くんのそれと合致したようで、ここ最近は私ともども戦績が思わしくなかった祐奈だけれど、今夜はなんだかうまくいきそうな雰囲気だと2人の様子を見ていて感じた。 「メー子、どこ行くんだよ」 「女の子にそんなこと聞いちゃイケマセーン。便所行ってくる」 「あっそ、ごゆっくり~」  メイクポーチを片手に、祐奈と席を替わった磯貝に見送られながら席を立つ。  2つあるトイレの個室に誰もいないことを確かめてから、洗面台に手をついて大きく息を吸った。 「なんでまだ現れないんだよ桜庭律!」  1時間だ。もう1時間経ってるのに、私はこの合コンで爪痕を残すとか以前のところで足踏みしている。  仕事が立て込んでるらしいから仕方ないと言えば仕方ないけど、私だってみんなみたいに合コンを楽しみたい。なのに私は、磯貝と談笑しているだけに終始している。  こんなの、彩を交えて3人で夕飯を食べてる普段のアフターファイブと変わらないじゃないか。結局仕事の段取りがつかなかったせいで、磯貝が言うところのまあまあの男前は来ないままお開きになるなんて、そんな展開イヤすぎて本当に泣けてくる。 「来ないね~、桜庭くん」  不意にドアが開いて入ってきたのは、祐奈だった。
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