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 自分には特別な何かがあるはずと信じていた頃に毎月購入していた占い雑誌には、”26歳頃に超絶モテ期がやってきます”なんて書かれていたけれど、その26歳は来月には終わりを迎えてしまう。  積極的に出会いを求めていたわけじゃないから、まだ本気出してないだけだから、を経て、やっと恋愛に対する重い腰を上げかけた矢先でのこの巡り合わせだ。交通事故の加害者と被害者という最悪の関係性ではあるけれど、トキメキを伴う運命を感じたならこの出会いは素敵なものに変わったのかもしれない。だけど、神様は私の人生にそんな優しいイベントなんて用意してくれてはいなかった。 「アスカ、お前まさか執行猶予中だったりする?」 「は……?」 「こんな独房みてーな部屋に住んでるからさ。何か悪いことでもしたんかなって」  ベッドに横たわる私を、その男性――マモルは憐れむような瞳で見下ろした。色白で耳がピアスだらけなのが残念だけれど、黒い短髪は男らしさを演出しているし、顔つきもキリっとしていてかなりのイケメンだということは認める。もし普通に出会っていれば、面食いな私のことだから即フォーリンラブしていただろう。  でも、人が毎日必死に働いて何とか確保している住まいを真顔で独房呼ばわりする男との恋愛なんて、どんだけいい方向へ思考をシフトさせても暗い未来しか見えない。そろそろ本気で将来を考えたいお年頃の私には、顔がいいだけの男の為に費やす時間なんて持ち合わせていないのだ。 「あの……マモル、さん」 「さんとか付けなくていいよ」 「いやでも初対面ですし」 「敬語もやめろって。仲良くなれねーじゃん」 「……家まで送って下さってありがとうございました。もう夜も遅いですし、今日のところはこれで」 「おい」  こうやって眼力でゴリ押しの圧を掛けてくる男とかもうホント最悪だって思いながらも、素直に委縮して黙り込む自分が憎い。 「やめろって言われてんだからやめろよ。人が嫌がってんのに更にかぶせてくるとか、お前とんだドS女だな」  どっちかっていうとMだ、という主張をしそうになったところで、何とかその言葉を飲み込む。見も知らない失礼な男に何をカミングアウトしようとしてるんだ私は。 「と、とにかく! 今日の件については明日改めてご連絡差し上げますから、割と本気で帰ってもらいたいんですけど」 「え、泊めてくんねーの?」
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