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3
スマホのアラーム音で目を覚ます。時間は6時ちょうどだ。アラームを切ってしばらく天井を眺めた後、私は自分の体を確かめるようにそっとふとんの中を覗き込んだ。
「……良かった、ちゃんと服着てる」
寝間着にしているたこ焼き柄のTシャツと、高校時代からの付き合いのあずき色ジャージが間違いなく私の体を包み込んでくれていることにほっとしつつ、上半身をゆっくりと起こした。
昨夜のことは夢であってほしい、そう思いながらソファの方に目を向ける。そこにはまるで現実を突きつけるかのように、安心しきったような寝息を立てるマモルが横たわっていて、私はがっくりとうなだれた。
「マジで寝てるし」
ベッドから足を下ろして大きく伸びをする。妙な倦怠感はすっかり体から抜けきっているし、この調子なら会社に行ってもたぶん大丈夫だろう。……身体的な部分に限っては。
「コイツを部屋に置いていくのいやだなあ……」
苦い顔で呟き、どうにかできないものかと頭を巡らせる。
ヴァンパイアは日中は寝て過ごすから特に害を加えることはないって言っていたけれど、そんなおとぎ話みたいな存在を心底信用したわけじゃないし、そもそも自分の住みかに信用ならない男を一人残して外出するのはどうしても気が引ける。
「やっぱり今日のところは休んだ方が……」
言いかけて、ハッと口を噤んだ。一日家に引きこもってマモルを監視するということは、同じ空間でずっと一緒に過ごすということだ。よく考えたら別に盗られて困るようなものは置いていないわけで、むしろ自分の身に何か起きてしまう可能性をつぶしておく方が得策なのではないか。
「よし、仕事だ仕事!」
独房みたいだろうがなんだろうが、私の大事な居場所だ。ここを守るためにも、そして自分の食い扶持を稼ぐためにも私は日々働かねばならないのだ。
私はベッドから腰を上げると、洗面所の方へ向かった。
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