四章 朝倉 陽太の手紙(1)

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 五つも歳上の花凛さんと晴実さんと仲良くなるなんて、思いもしなかったな。二人とも気さくで、とても話しやすい人だった。サバサバとした花凛さんと、物腰の柔らかい晴実さん。正反対の二人だったけど、とてもお似合いだった。  晴実さんはおじいさんが花屋だから、たまにお店の手伝いをしてるって言ってたよな。練習で作った花束をよく花凛さんにプレゼントしててさ。手に持った紙袋は花凛さんの位置からは見えない高さにあるから、俺達が先に気付いて。その度に人差し指を口の前に立てて、桜の花みたいに優しく微笑んでいた。その仕草を見て、俺達も自然に笑顔が零れた。晴実さんは、そんな人だったよな。  花凛さんは気さくに話しかけてくれて、こっちの話をいつでも真剣に聞いてくれた。明るくて、いつでも前向きで、元気がもらえた。花凛さんの人柄も、常連さんに人気だったのかもな。
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