一章 一色 陸の話(1)

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 七美(ななみ)、夏休みの最終日に突然お邪魔してごめんね。  今日は夕方から大雨の予報だから、話が終わったらすぐに帰るから。  お父さんとお母さんはお仕事? あぁ、その時間なら、挨拶せずに帰ることになっちゃうな……。後でよろしく伝えておいてほしいな。  ごめん、その番組観てないや。「愛で地球を救う」ってやつだよね? え? 「愛で」じゃなくて「愛は」? へー、そうなんだ。今年のテーマは「誓い~一番大切な約束~」? その番組は嫌いだけど、誓いなら今の僕にも当てはまるかもしれないな。僕は覚悟を持って、ここへ来たから。何で嬉しそうなの。そんな、明るい話じゃないよ。  どうしても今日、七美に話しておきたいことがあるんだ。  これから話す内容は、誰にも話さない方がいい内容なんだ。  でも、誰かに打ち明けて、僕の何もかもを一度捨て去りたいんだ。  きっと幼馴染の七美だったら、僕を理解してくれると思って。  いや、理解してくれなくていい。ただ聞いてくれさえしたら、僕はもう満足だよ。
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