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「遅れてごめん。なんの話で盛り上がっているんだよ?」
救世主は沈んだ空気をもろともせず、颯爽と始の隣に座って自分も話題に入る気満々な態度をみせた。
「瞬一のアレについて聞いてたところだよ」
始が切り分けたお好み焼きを皿に乗せて、太一の前に置いた。
今日は、瞬一がアレになった話を聞くという名目で、粉もん屋·藍屋にいつものメンバーに集合をかけて、五人の内早川瞬一、空井龍之介、岡野始、中村太一と、ほぼ全員が揃っている。
残りの一人は学業とは別に多忙な活動のため、オフの日じゃない限り滅多にここには来られない。
藍屋の奥に設置しているテレビから、最近繰り返し流されるCMの音にみんなの視線を向いた。
端正な顔立ちの若者が、新発売のお菓子を手に持って、カメラ目線で、君とシェアしたいと締める台詞が世の女性たちの心をキュンキュンさせている。
「あいつは、あの世界に入った瞬間から恋愛禁止だから、俺より絶っっ対ストレスだと思う」
「瞬一と違って、あいつが自ら決めた道だから、覚悟が違うな」
龍之介に根本的なことを突かれて、瞬一はテレビから視線を外し、お好み焼きを食べることに戻った。
山崎ケイは、中学生の時にアイドルグループとして芸能界デビューした幼馴染だ。今は俳優の仕事もこなしている。
つい先日直接的な恋愛禁止という名の呪いをかけられた瞬一は、間接的に恋愛禁止の世界に飛び込んだ幼馴染に今度オフの日に会った時に聞いてみたいことがあった。
なんでおまえは今しかない青春をあっさり捨てられるんだよと。
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