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ゼミのフィールドワークで山間に行った際、雨に降られた。
その場にいたのは、俺ともう一人のゼミ仲間だけで、二人して慌てて木の下に駆け込んだのだが、そこそこ大きな木の下を選んだ俺と違い、そいつはかなり小ぶりな木の下に逃げ込んだ。
雷対策で、大きな木の下は避けた方がいいという話も聞くが、周りには、細いがもっと高い木もあるから、この木に雷が落ちることはまずないだろう。
そう思い、こっちに来ないかと相手を誘ったが、ゼミ仲間は飛び込んだ木の下から動こうとしない。
低くて枝も細く、葉もあまり繁ってないから、そこじゃ雨宿りの意味がないだろうに。
そう思ったけれど、本人が拒否するのだから仕方ないと、誘うのをやめたら、そいつが何か話し始めた。
「そこの木はダメだよ。周りにはもっと高い木があるから、雷は落ちないかもしれないけど、そこは木が太くて枝も頑丈だ。だからロープがかけやすいし、ぶら下がっても枝が折れることはまずない」
いったいこいつは何を話しているのだろう。
声は聞こえるが内容が掴めず、戸惑っていると、頭の上の方で、葉に当たる雨音とは別の音が聞こえた。
「そういう木にはいるんだ。勝手に自分で死んだくせに、生きてる人間を巻き込んでやろうとする『やつ』が。今、そいつが落ちてこようとしているから、すぐにそこから逃げた方がいい!」
叫ぶようになった相手の言葉。それに従うより早く、頭上から落ちてきた何かが、勢いよく俺にぶつかってきた…。
大きな木の下…完
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