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白濁した天使、純白でないのを恨むべきか
君のために本物の天使になりたかった。
僕が天使だったら、君は死なずに済んだんだ。
胸が痛い。君を救えなかった。
どうしようもない気持ちが黒い淀みとなり雨みたいに、僕の心に降り注いでる。それも容赦なく。
ああ、絶望でしかない。
代わりに僕が死んだら良かったんだ。それなのに、神様は酷く残酷だ。
僕よりも彼女を天国に連れて行ったんだ。
いや、天国なんて名ばかりの場所。
美しい花なんて1つもありゃしない、まっさらすぎる空白な世界だよ。
そんな冷たくて寂しい場所に彼女を導くなんて、神はおかしい。
あまりにも狂おしくて、もう笑うしかない。
自分から乾いた笑いがでたことに、憂鬱を感じる。そんな最低な無力さが恨めしい。
彼女、ナナミは今日燃やされて骨になった。
骨になったら、笑顔になることはもう2度とない。
大切で特別な微笑みだったのに。
僕はナナミが、あの幼い可愛い笑顔が大好きだった。可憐で愛らしい女の子。
まだ、9歳なのに死んだ。
どうか、許して。
だって、僕は『死神』だから。
死神って命を奪う存在。人間にはそう見えるだろうが、実際は違う。
死ぬのを見届けるだけ。それしか出来ない。
命の長さを決めるのは神の役割。
そういうルールなんだ。
ナナミが死んだ今日は、これ以上ないくらい空が青くて、白い雲がふわふわ浮かんでいた。
まるで神が祝福してるみたいな天気が憎い。
くそったれ。
もう、いっそ死んでしまいたい。
だって、この世にはナナミ以上に綺麗な人なんてないんだから。
汚すぎる人間ばかりが溢れてる現代に、求めるものは何もない。
純粋で優しい彼女は皆に愛されていた。
葬式に、彼女の死を悲しむ奴らが沢山。
それだけ、ナナミには生きる価値があったのに。
悲しみのあまり、舌打ちした。
消えてしまおう。
そう決めて、そのへんのゴミみたいな人間に、僕の命の長さをくれてやった。
本当ならナナミにあげたかったけど、無理だった。
身体がどんどん灰になって、空気を汚しながら散っていく。消えてなくなるのは、凄く痛いはずなのに、心は安らぎに満ちていく。
ナナミが、許してくれたような。
いや、きっと気のせいだ。
……さようなら、言えなかった。
心残りなことばかり。
走馬灯だろうか。
ナナミとのあたたかな思い出が頭の中を流れている。
あの柔らかな笑顔に、もう1度だけ触れられたみたいで、良かった。
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