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「てんちゃんが居なくなったらナナは凄く悲しい。ナナのためにてんちゃんは居なくならないで。ナナはてんちゃんが大好きで大切だよ」
じゃあ、どうしたらいい?
ナナミは死んでしまう運命を受け入れるっていうの?
生きたいと思ってよ。頼むから。
「お願いだよ、ナナミ。僕はナナミに生きてほしいんだ」
「てんちゃん。いいの。てんちゃんが居るから、ナナは幸せで笑顔いっぱいなんだよ、だから、もういいの」
ナナミの微笑みはまるで天使のように美しく、優しい。
ダメだよ、ナナミ。もっと生きたいと願ってくれ。
僕だってナナミの未来を望んでいるんだから。だから命を受け取ってよ。
それなのに、ナナミの瞳には静かな覚悟が宿っていた。
「ありがとう、てんちゃん。ナナ、もう疲れてきちゃった。ちょっと早いけど寝るね。おやすみなさい」
ナナミはベッドに横たわり、目を閉じた。
静かさを嫌というほど感じるセピアの病室、もう夕方だ。
夕日がナナミを強く照らしている。
色あせた世界にオレンジ色が加わるのが、やけに悲しくて涙が出てきた。
ナナミの心臓はゆっくりと動かなくなった。
その姿は今まで見たどの死よりも、悲しく、儚く、ただひたすら美しい。
天罰が下ったんだ。今まで人間の死を笑っていたから……
ーー僕はナナミを救えなかったーー
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