死神なのに、喜ぶなんて

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死神なのに、喜ぶなんて

僕は誰よりも死神らしい死神だ。 だって人間の死を見届けるのが大好きだから。 苦しみながら、もがきながら、本当はもっと生きたいと強く願いながらも、死んでいく惨めな生き物。 虫けらたちよ。もっともっと消えていけ。 沢山僕を楽しませてくれ! ああ、死神は本当に、退屈しないなあ。 今日も、誰かが死ぬのを見てあげようじゃないか。 人間が死ぬのを見てるのは、単純に面白いから。 死ぬ瞬間の人間の(すさ)んだ目つき。 悲しみを含みながら絶望する、あの目だ。 (せい)にすがる様は可哀想で可哀想で。 好きでたまらない。 初めて見た時の衝撃は未だに忘れられない。病みつきになったんだ。 特に病人が良い。初めての時も末期の大腸がんだったっけか。やせこけてたじじいが、か細く生きていたのに、散々苦しんで死んでいった。 思い出すと、まだ笑える。 また楽しませてもらうよ。 ターゲットを探す。もうすぐ死にそうな人間が沢山いるだろうから、病院という建物に行こう。なるべく大きな所が良い。 だだっ広い、病院の敷地内に侵入した。 死神だから、宙に浮いてる。好き勝手にあちこち行けるんだ。自由でいいだろ。 病院の庭に降りてみた。木が連なっていた。 色んな、名前も知らないような花たちも地面に植えられていて咲いてる。 赤い、白い、黄色い。 そよ風に揺れて踊っているみたいに見えたから、鼻で笑ってやった。 春は、嫌いだ。だって植物たちが生き生きとしているから。気分が最悪になる季節。 春の独特過ぎる、爽やかな空気の匂いも吐きそうで嫌。 イライラしてくるな。 早く冬になればいい。 草木が生命力を失い枯れるし、空気も突き刺すように冷たいから。
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