死神なのに、喜ぶなんて

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ふと、一番大きな木が気になったから近づいた。長生きな樹木も嫌いだ。太っちょみたいだからかっこ悪い。 どんな木か見上げてみる。 あっ、ピンク色のやつは分かるぞ。桜だ。 薄桃の桜の木が、風のせいで花を散らしている。 儚さが人間の命みたいだって?それは違うな。 人の命が儚いわけない。 桜の花びらが地面に落ちてる。落ちたものはゴミとなっていた。あんなに綺麗と、多くの人が言っていたはずなのに。 年配の女が掃除をしている。 疲れ切った顔をしていて、今にも死にそうに見える。 清掃員だろうか。まあ、どうでもいい。 命だって、桜の花だって散ってしまったら全て無駄になるんだ。あのゴミのように。 まあ、桜は来年になればまた咲く。 でも人間は違う。生き返ったりなどしない。 それがまたいいんだよな。 僕は女の目の前に来た。にんまりと笑顔で大きく手を振ってみたが反応がない。 気づかないということは、死期がまだなんだ。 もう死にそうな年齢くらいだろ。髪は白髪が多いし、顔だってしわくちゃ。 しょうがない、他を探すか。 ふわりと漂いながら、進んでみると建物の4階の1部屋の窓が開いていることに気がついた。
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