死神なのに、喜ぶなんて

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開いていた窓から病室の中に入る。 病院に漂う鼻を刺すような匂い、嫌いじゃない。ツーンとした臭さが、なんだかあとにひく。 外の陽気とは違い、部屋は冷たい空気に包まれている。 あまりにも清潔な真っ白すぎる空間。 壁にはカラフルな千羽鶴が飾られている。 この病室は春じゃない。しん、と静かだ。セピアに感じる空間に、その折り紙の鶴だけが部屋に彩りを添えていた。 いかにも不健康そうな1人の子どもが居る。 まるでセピアの世界の住人に見えた。 だって、この子どもは命の色を感じないくらい、弱々しい。 パジャマも何故か白を基調とした黒い花模様のモノトーン。尚更暗い感じ。 僕を見て驚いたようだ。 ベッドで寝ていたのに、起き上がった。 そして、僕に向かって指を差してきた。 「わあ!天使さん!」 こいつ、今にも死にそう。 顔に赤みがないし、いかにも病弱な感じ。 赤い毛糸のような帽子をかぶっているから余計に顔が青ざめて見える。 もって1日か2日がいいところだな。 っていうか、僕を天使だと思ってやがる! 「僕は天使じゃないっつうの!死神だよ死神!」 手を違うと横に振りながら、教えてやった。 怖がるだろうと思ったら、子どもは目を輝かせながら、笑った。 その表情は子供らしく、無邪気で可愛い。 「死神さん!来てくれて、ありがとう!ナナはもう死んじゃうんだね。良かった。もう病気に苦しまないでいいんだ」 いつもなら人間は怖がるはずなのに。 怯えた態度が見たかった。 何でこいつ、喜んでる? 死ぬのが嬉しいように見えるぞ。 僕は死神なのに子どもは、楽しそうだ。 むしろ僕が怖くなってきた。 だって、死を全く恐れてないようだから。 普通、人間なら死ぬのが怖いだろ。 変な子ども。 まるで僕が間違っているかのようだ。 違和感でしかない。 何人も死ぬのを見届けてきた。 その度人間が苦しそうにするのを楽しんでた。 それなのに、この子どもは死に対して救いを感じている。今までそんな奴は居なかった。 あり得ない。怖い。でも、こいつが気になってきた。
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