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「お前、死ぬのが怖くないのかよ」
「ぜーんぜん怖くないよ。ナナはね、ずーっと病気で痛いの。だから死んだっていいもん。ママがナナミはいい子だって言ってたから、天国に行くんだよ」
こいつ、生きてるのが辛いんだ。
こんな人間初めてだ。
……可哀想に。
「ナナミは、治療頑張って元気になりたくないのか」
ナナミは首を大きく横に振った。少し大げさなくらいに。
「ナナはもう、ちりょう嫌。痛いの嫌い」
何でだよ、もっと生きたいと思えよ。
生きたくなれば、死という絶望が際立つのに。
「生きたほうが、幸せだぞ」
僕の言葉にナナミは不機嫌な顔をした。
眉間にシワが寄っていて、口をむっとさせてる。
「もう嫌なの!!うわあああん」
お、おい泣くのかよ。
次から次へとぼろぼろ涙が。
大きい声をあげながら、わあっと泣いてるのを見ると、僕は胸がギュッと痛みで締め付けられた。
今まで誰かに対して気の毒だと思ったことないのに。
全く生きたいと思わないナナミが可哀想でならない。
死んだほうがいい?そんなこと子どもが言うことかよ。
でも、僕は死神だ。こんな感情はおかしい。
どうしたら、いいものか考えた。
そうだ、遊び相手になって楽しませれば、死にたくなくなるかもしれない。
楽しいことすりゃ、人間は生きたくなるはず。
生きたいと思わせて、死を存分に絶望してもらおう。死ぬのを怖がらせてやるんだ。
そうすればきっと僕は楽しくなるはずだ。
「遊び相手になってやるから、泣き止めよ」
遊び相手と聞いた途端、泣いてた声がぴたりと止んだ。
そして、ナナミは涙を袖でゴシゴシと拭いた。
服のこすれる音が微かに聞こえてる。
にっこりと口角が上がった。
満面の笑みで遊ぼう!遊ぼう!とやる気になったようだ。
そうだ。散々楽しませて、一気にどん底に突き落としてやるから。せいぜい今だけ喜びな。
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