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ナナミはうーんと、ね。としばらく考え込んだあと、顔をあげて言った。
「ナナをたーくさん笑わせて」
「笑わせる?」
どうやっていいか、全く分かんないんだけど。
死神って、人の絶望や悲しみを楽しんで笑うんだぞ。
普段、そんな風に笑う僕にそんな、笑わせるなんて優しいことができるかな。
「天使さんはね、笑顔を届けるんでしょ?だからナナを笑顔いっぱいにして、お願い!」
お願いか、まあ、叶えられるなら。
「どうしたら、ナナミは笑顔になるの?」
「天使さん、にっこり笑ってみて」
僕が? どうしよう。人の死ばかり見てきてるから、嘲笑ったりとか馬鹿にした笑いしか出来ないぞ。口角をあげて、目を細めればいいのか?
ぎこちなくても笑ってみせたが絶対に不自然だ。
それでもナナミは喜んでくれて、天使さん笑顔面白いね!とクスクス笑ってくれた。
その瞬間、何かが変わった気がした。
なんだ、この気持ち。
胸の真ん中らへんが、あたたかい気がするし、なんだかくすぐったいぞ。
天使、悪くないな。
今だけ、今だけ僕は天使に。
死を怖がらせようとか、細かいことはあとにして。
とりあえず楽しい時間を一緒に過ごすか。
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